2005 Fiscal Year Annual Research Report
染色体異常に基づいた前立腺癌の進展・予後を予測する新たな生物学的マーカーの検索
Project/Area Number |
16591579
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
土谷 順彦 秋田大学, 医学部, 助教授 (70282176)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽渕 友則 秋田大学, 医学部, 教授 (00293861)
堀川 洋平 秋田大学, 医学部, 助手 (40361232)
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Keywords | 前立腺癌 / 染色体異常 / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
本年度は前立腺癌の進展と遺伝子変異との関連を検討した。初診時転移を有する前立腺癌の予後は症例により大きな差が認められ、これまで治療前PSA、ヘモグロビン値、ALP値、EOD、病理組織学的因子などをはじめとするさまざまな予測因子が提唱されてきた。一方、癌の進展や治療に対する反応は、腫瘍に特異的な因子のみならず宿主側の因子、すなわち環境や遺伝的素因によっても規定されると推測されている。我々は、宿主側の因子として遺伝子多型(genetic polymorphism)に注目し、転移性前立腺癌患者の予後を規定する遺伝子多型マーカーの検索を行った結果、2つの遺伝子多型(IGF-I[CA]n, CYP19[TTTA]n)が転移性前立腺癌の予後規定因子となりうる可能性が示唆された。 IGF-Iは細胞の増殖や分化そしてアポトーシスに関与している重要な増殖因子の一つであり、IGF-I遺伝子のCA反復多型はIGF-Iの発現を調節していることが示唆されている。IGF-Iは癌の増殖に対して促進的に作用し、前立腺癌ではアンドロゲン非存在下にも癌細胞の増殖を刺激することが示されている。したがって、本多型はアンドロゲン依存性、非依存性の双方の細胞増殖機構を介して転移性前立腺癌の進行に関与している可能性がある。一方CYP19はテストステロンをエストロゲンに変換する酵素(aromatase)であり、男性においては前立腺肥大症や前立腺癌の発症や進展に重要な役割を果たしていると考えられている。 初診時転移を有する前立腺癌は、進行性前立腺癌の予後規定因としての遺伝子多型マーカー検索にとって非常に有用な臨床モデルである。このような遺伝子多型マーカーは、根治手術や放射線照射後の再発性前立腺癌にも応用できる可能性があり、治療計画や経過観察における個別化を進める上で重要な情報を提供するものと期待される。
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Research Products
(4 results)