2005 Fiscal Year Annual Research Report
ナトリウム重炭酸共輪送体の選択的阻害による腎癌転移抑制の試み
Project/Area Number |
16591614
|
Research Institution | FUKUOKA PREFECTURAL UNIVERSITY |
Principal Investigator |
森山 信男 福岡県立大学, 看護学部, 教授 (80143501)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 常司 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (30206619)
有泉 高史 福岡県立大学, 看護学部, 助教授 (30286166)
|
Keywords | 正常腎 / 腎癌 / Na-HCO_3共輸送体 / 細胞株遊走能 / NBC1特異的阻害剤(S0859) / 抗NBC1リボザイム(Rz-NBC1) |
Research Abstract |
転移性腎癌は予後不良であり、既存の化学療法・免疫療法に対して抵抗性を示すため、新たな発想に立った分子治療法の開発が求められている。 Na-HCO_3共輸送体(NBC1)は酸・塩基平衡や細胞内外のpH調節、および組織恒常性の維持などに非常に重要な生理的役割をになっており、同一遺伝子(SLC4A4)に由来する主要な二つのヴァリアント、腎型輸送体(kNBC1)および膵型輸送体(pNBC1)が存在する。kNBC1は主に正常腎の近位尿細管基底側膜に強く発現し、この部位の重炭酸再吸収を司っている。ヒト腎癌組織にもkNBC1の強い発現が見いだされた。ある種のイオン輸送体(Na/H交換輸送体、NHE1など)が癌細胞の転移活性と密接な関連を有することが報告されているので、腎癌細胞におけるNBC1の意義について、特に転移活性との関連について解析を行った。 1)ヒト腎癌由来の細胞株におけるNBC1発現をWestern blot法にて解析したところ、全ての細胞株において強いNBC1発現を確認した。またマウス腎癌由来の細胞株(RENCA細胞)においても同様にNBC1発現を確認した。kNBC1が優位であったが、一部の細胞株ではpNBC1の発現も確認された。2)蛍光色素(BCECF)用いた細胞内pH測定実験などにより、これらの細胞株にはNa-HCO3共輸送体(NBC)活性が発現していることが確認された(NBC1活性を反映したもの)。3)Boydenチャンバーを用いてこれらの腎癌由来の細胞株の遊走能を評価したところ、NBC1の特異的阻害剤(S0859)によって強く抑制されることが確認された。即ち、腎癌細胞は他の組織由来の癌細胞と異なり、その遊走能はNBC1に強く依存していることが示唆された。なお、NBC1発現を抑制する作用が確認されている抗NBC1リボザイム(Rz-NBC1)を一過性に発現させると、腎癌細胞の遊走能は有意に抑制されたことにより、NBC1と遊走能の深い関連が確認された。in vivoでの腎癌転移モデル作成の前段階として、Rz-MBC1の安定高発現株の作成を試みているが、現在までにこれらの株は著明な発育障害を生じ、継代が困難である。NBC1は腎癌の転移機構だけでなく、増殖・発育機構においても何らかの役割を担っていると推察される。
|
Research Products
(2 results)