2005 Fiscal Year Annual Research Report
HGF/c-metシグナル伝達抑制による後天性嚢胞腎癌化予防の基礎的検討
Project/Area Number |
16591615
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
近田 龍一郎 岩手医科大学, 医学部, 助教授 (10225609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小原 航 岩手医科大学, 医学部, 助手 (90337155)
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Keywords | hepatocyte growth factor / c-met / Akt / PTEN / p27 / IGFR-1 |
Research Abstract |
腎癌の合併のため摘出された後天性嚢胞腎を用いてHGFとその受容体である c-metの発現を観察したところ、嚢胞壁特にcuboidalあるいはhyperplasticな壁持つ嚢胞と腫瘍部でHGF/c-metの発現が顕著に亢進していた。こうした嚢胞壁や腫瘍部では抗apoptosis因子であるBcl-2の発現も亢進しており、嚢胞形成から癌化にかけてHGF/c-met pathwayが重要な役割を演じている可能性が示唆された(以上はKonda R, Sato H, et a. J Urol,171:2166,2004に投稿)。 腎癌の進展にはinsukin like growth factor(IGF)が重要な因子として関与しているとの報告がある。そこでその受容体であるIGF receptor 1(IGF1R)について検討したところ、後天性嚢胞腎では正常に近い尿細管での発現は認められたが、後天性嚢胞や腎癌での発現はほとんど認められなかった。HGF/c-metの情報伝達には2つの主要な経路(Ras-MAPK pathwayとPl3-kinase-Akt pathway)があり、主としてPl3-kinase-Akt pathwayが腫瘍の発生や進展に重要な役割を演じるとされている。そこで、後天性嚢胞腎及びそれに合併する腎癌でのactivated Akt(phosphorylated Akt ; pAkt)、p27、PTENについて検討を行った。後天性嚢胞腎では正常に近い尿細管ではpAkt、PTEN、p27いずれも発現が正常コントロールの腎に比較して亢進していた。嚢胞についてみると、壁が薄いflat cyst(HGF/c-metの発現は低い)では、pAkt、PTEN、p27のいずれも発現は低下していた。HGF/c-metの発現の亢進を伴うCuboidal cystではpAkt、PTENの発現は亢進していたが、p27は減少していた。これに対して、前癌状態と考えられているhyperplastic cystではpAktの発現はさらに亢進していたが、それに比較しp27の発現は低下していた。腫瘍ではp27に加えPTENの発現も低下していた。PTENはPl3-kinaseによるAktの活性化を阻害することにより抗腫瘍効果を示すが、PTENの抗腫瘍効果の一部はp27と協調して発現すると考えられている。p27の低下はPTENの抗腫瘍効果減弱につながるとされ、hyperplastic cystにおけるp27発現の減弱はこの嚢胞が前癌状態であることを強く示唆し、Akt、PTEN、p27発現のimbalanceが癌化過程において重要な役割を演じていると考えられた(現在投稿準備中)。
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Research Products
(3 results)