2005 Fiscal Year Annual Research Report
クエン酸シルデナフィル無効果例に対する新しい勃起障害治療の試み
Project/Area Number |
16591625
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
石井 延久 東邦大学, 医学部, 教授 (10111270)
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Keywords | 勃起障害 / クエン酸シルデナフィル / protein kinase A / protein kinase G / phosphodiesterase type-III / Rho kinase |
Research Abstract |
陰茎の勃起状態をもたらすためには陰茎海綿体を弛緩させなくてはならない。平滑筋の弛緩の機序にはadenylate cyclase(ACase)の活性化によるcAMPの増加とprotein kinase A(PKA)の活性化ならびにguanylate cyclase(GCase)の活性化によるcGMPの増加とprotein kinase G(PKG)の活性化がある。後者にはnitric oxide synthase(NOS)によるnitric oxide(NO)産生が関与している。クエン酸シルデナフィルはこのNOを分解するphosphodiesterase type-V(PDE V)を阻害することによって、各種刺激により陰茎内に増加したNOの効果を増強する。今回はクエン酸シルデナフィル無効例を実践するため、摘出ウサギ陰茎海綿体標本を用い、電気刺激(2.5〜40Hz)の弛緩反応に対する影響を見るため、PKG阻害薬KT5823、PKA阻害薬KT5720、phosphodiesterase type-III(PDE III)阻害薬SKF94836、Rho kinase阻害薬Y27632を1時間前投与した。PDE V抗体(反応槽濃度2000倍希釈)が電気刺激(2.5〜40Hz)の弛緩反応を抑制する傾向を示したが、優位ではなかったので、PDE V抗体(10倍希釈)を生体に直接投与して24時間後に摘出した陰茎海綿体を実験に供した。KT5823は電気刺激の弛緩反応に影響しなかった。このことは、GCase→cGMP→PKG経路がNOによる弛緩に関与していない可能性を示唆する。KT5720も電気刺激の弛緩反応に影響しなかったので直接のPKA活性上昇によるものは関与しないと思われる。しかし、KT5823とKT5720は100μMの高濃度にかかわらず影響がなかったのはそれらの溶解性にも問題があるのかもしれず、別な系で実験をする必要がある。PDE IIIはcGMPにより抑制され、cAMPの分解が抑制される。阻害薬SKF94836は電気刺激による弛緩反応を若干抑制する傾向を示したが、その機序の説明には別な実験系が必要である。Rho kinase阻害薬Y27632はそれ自身で平滑筋収縮を抑制するため、弛緩反応を見るに必要なphenylephrineの収縮が出にくく、はっきりとした結果が得られなかった。ただ、Rho kinase阻害薬が陰茎海綿体に弛緩を生じたことは、この薬物が勃起不全の治療に使える可能性を示す。陰茎海綿体と他の臓器の間のRho kinase系の差違を検討する必要があると考える。もし、陰茎のRho kinase系に特異的な個所が見つかったら、そこを標的とする薬物の開発こそが新しい勃起不全の治療薬の開発につながり、しいてはクエン酸シルデナフィル無効例に対する治療薬の開発にもつながるものと考える。PDE V抗体を投与したウサギから摘出した陰茎海綿体は特徴的な自発運動もあまり見られず、電気刺激による弛緩反応を増強した。このことは、抗体によりPDE Vが抑制を受け、電気刺激で遊離したNOによるGCase→cGMP系の反応が亢進したもののcGMPの分解が抑制され、弛緩が増強したことを示すものと思われる。すなわち、クエン酸シルデナフィル無効例に対し、PDE V抗体の陰茎内投与が有効である可能性を示す。
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