2004 Fiscal Year Annual Research Report
子宮内膜の分化と細胞運動におけるヒストンアセチル化の役割の解明
Project/Area Number |
16591683
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
内田 浩 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (90286534)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 哲夫 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (10209702)
吉村 泰典 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (10129736)
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Keywords | 子宮内膜上皮細胞 / 分化制御 / 細胞浸潤 / ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤 / glycodelin |
Research Abstract |
ヒト子宮内膜組織は剥離再生を繰り返す中で、受精卵の着床に備えた周期的な分化過程をたどる。我々は遺伝子転写制御機構の一端を担うヒストンの可逆的アセチル化を制御するヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)に対して、阻害剤(HDACI)を添加する事で、性ステロイドによる子宮内膜間質細胞脱落膜化を促進することを明らかにした。本研究では着床時の受精卵初期接着面を構成する子宮内膜上皮細胞を標的とし、腺上皮由来の子宮内膜腺癌細胞株Ishikawaを用い、HDACIによる人為的分化制御の可否につき検討した。その結果、Ishikawaに一部のHDACIを添加する事で、性ステロイド非依存的に、分化後の分泌期特異的に発現するglycodelinをmRNA・蛋白の両レベルで発現誘導することに成功した。その誘導がglycodelin遺伝子の転写制御によることも併せて明らかにした。さらに、HDACI添加は性ステロイドの反応に近似した細胞形態学的分化、増殖機能制御、グリコゲン産生を誘導し、それら一連の変化がsiRNAを用いたglycodelin gene silencingによって消失することを見いだした(投稿中)。また、IshikawaへのHDACI添加は細胞浸潤機能にも影響を及ぼすことを明らかにした。すなわち、細胞浸潤アッセイ・創傷治癒アッセイにより、細胞の単独レベル・集団レベル双方での浸潤能がHDACIによって、性ステロイド由来と同等あるいは、より高レベルで促進された。この細胞浸潤誘導能もまた、gene silencingによりglycodelin発現と強い相関を示す事を明らかとした(投稿準備中)。以上の結果は、HDACIが子宮内膜上皮の分化誘導剤として、内膜機能の障害・破綻に関連する内膜機能不全や内膜症に対しての新規治療薬となりうる可能性を示唆しており、その分子機序にglycodelinが大きく関与していることを示唆している。
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Research Products
(2 results)