2005 Fiscal Year Annual Research Report
内耳特異的蛋白および難聴原因遺伝子のコードする蛋白に関する研究
Project/Area Number |
16591702
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
工 穣 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (70312501)
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Keywords | 内耳 / CRYM遺伝子 / Na,K-ATPase / 甲状腺ホルモン / カリウムイオンリサイクル |
Research Abstract |
内耳に特異的あるいは高発現している遺伝子は難聴の原因遺伝子である可能性が高く、実際にいくつかの難聴原因遺伝子が同定されている。細胞質甲状腺ホルモン結合タンパク(CRYM)遺伝子はNADPH依存的性にトリヨードサイロニン(T3)と高い親和性で結合し、主に細胞質に存在するタンパク質で通常ホモ2量体を形成し核へのホルモン調節機能を担っている。2003年阿部らにより内耳に高発現している遺伝子群の1つであることがcDNAマイクロアレイによって確認されており、CRYMに変異を持つ非症候群性難聴の2家系が報告された。1家系はストップコドンがTyrに変化するX315Y,もう1家系はストップコドンの1つ前のアミノ酸が変化するK314Tであった。今回この二つの変異に関してそれぞれのcDNAを利用しT3との親和性を検討した。またCRYM異常による難聴の機序を推測するために内耳でのCRYMの局在とNa,K-ATPaseとの共存について調べた。 まずWild-type,X315Y,K314TをHA-tagを付加しクローニングした。それぞれのタンパクをTNT Coupled Reticulocyte Lysate Systemを用いて発現させそれぞれのタンパク分画とT3の結合能をスキャッチャード解析により検討した。また,CRYMの内耳での働きを検討するために,マウスCRYMに対するポリクローナル抗体を作成し,マウス内耳でのCRYMの局在を検討し,Na,K-ATPaseとの二重染色を行った。 NADPH存在下でのスキャッチャード解析による結果ではK314T変異を組み込んだCRYMタンパクではT3結合能が著明に低下していることが明らかになった。このことからCRYM変異はCRYMとT3の結合能に影響を及ぼすことにより難聴になっていることが示唆された。また免疫組織化学では,CRYMはマウス内耳において蝸牛のらせん靭帯のII型繊維芽細胞に局在していた。T3は核内に運ばれ核内のレセプターに結合することにより,様々な遺伝子の発現を制御している。一方Na,K-ATPaseは内耳らせん靭帯に発現しており,またT3により転写調節を受けているという報告のある酵素である。そこで,Na,K-ATPaseとCRYMの二重染色を行ってみたところ,II型繊維芽細胞において,Na,K-ATPase β1とCRYMが共存していた。蝸牛にはらせん靭帯を始めとする疎性結合組織が存在しており,線維芽細胞が豊富に存在している。近年これらの細胞は内耳におけるカリウムイオン輸送機構および内リンパ電位形成機構において重要な役割を果たしていることが明らかになっている。これらのことから,CRYMによりT3が核内に運ばれ核内レセプターに結合しNa,K-ATPase β1が発現することで,カリウムイオンリサイクルにおいて重要な役割を果たすことが考えられた。またCRYMの異常により結果的にカリウムイオンリサイクルが阻害され難聴をきたすのではないかと考えられた。
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Research Products
(1 results)