2004 Fiscal Year Annual Research Report
味覚障害に関与する組織レベルでの亜鉛欠乏の機能的評価法の開発
Project/Area Number |
16591710
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
宮崎 かつし 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助手 (10335820)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 憲昭 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (30206982)
|
Keywords | 亜鉛欠乏 / 味覚障害 / ACE / 血中亜鉛濃度 / ACE活性比 |
Research Abstract |
我々の開発したACE活性比を用いた組織レベルでの亜鉛の欠乏状態の評価法を再現性のある臨床検査法とするため、ACE活性比の至適測定条件につき、検討した。血中のACE活性は、基質であるHGHLを反応させ、産生される安息香酸をメタ過ヨウ酸で発色させ、505nmで吸光度を測定する。これにより、血中の活性型holo-ACE活性を測定する。次に、血漿に過剰量の亜鉛を添加し、活性中心に亜鉛のないACEに亜鉛を結合させて活性型に変換させ、ACE活性を測定する。両者の差から、非活性型apo-ACE活性を測定する。活性型ACE活性と非活性型ACE活性の比によりACE活性比を求める。添加する亜鉛の濃度を150μmol/lまで検討した結果、45μmol/l至適濃度であることを明らかとした。また、pHは1mMリン酸バッファーをpH8.3に調整して用いた。反応温度を厳密に37℃に保つことも、再現性のある測定のために必要であることがわかった。 健常成人30名のACE活性比を測定した。健常人の血中亜鉛濃度は77.4±8.4μg/dl(mean±S.D.)、ACE活性は14.7±7.6IU/lであり、ACE活性比は1.10±0.6%であった。健常人の非活性型apo-ACE活性は十分に低いことがわかった。また、mean+2SDからACE活性の正常範囲は2.3%以下に設定した。 次に徳島大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科の味覚外来を受診した味覚障害患者のうち、血中亜鉛値が異常低値を示したいわゆる亜鉛欠乏性味覚障害患者と、血中亜鉛値が正常範囲である特発性味覚障害患者につき、ACE活性比を測定した。いわゆる亜鉛欠乏性味覚障害患者の血中亜鉛濃度は55.7±5.8μg/dl(mean±S.D.)、ACE活性は14.5±4.0IU/lであり、ACE活性比は13.7±6.6%であった。特発性味覚障害患者の血中亜鉛濃度は77.6±8.4μg/dl(mean±S.D.)、ACE活性は14.5±3.3IU/lであり、ACE活性比は9.8±4.0%であった。以上の結果から、血中亜鉛値が異常低値を示したいわゆる亜鉛欠乏性味覚障害患者だけでなく、血中亜鉛値が正常範囲である特発性味覚障害患者も血中ACE活性比から評価したところ亜鉛欠乏と考えられた。血中亜鉛の大部分はアルブミンなどのタンパクに結合しており、遊離の亜鉛は少なく、組織レベルでの亜鉛の栄養状態を反映していない可能性がある。味覚異常患者は血中ACE活性比が低く、血中亜鉛濃度に関係なく、組織レベルで亜鉛が不足しており、味蕾のターンオーバーが障害され、味覚異常が発症しているものと考えられた。 次年度の研究では、年齢別の健常人の血中ACE活性比を検討し、年齢をマッチさせた健常人群と味覚障害患者群でのACE活性比を比較する。また、味覚障害患者に亜鉛製剤を投与し、血中ACE活性比が低下するか、またその低下と味覚の改善度との相関を検討する。
|
Research Products
(2 results)