2004 Fiscal Year Annual Research Report
後天性中耳真珠腫の発症・進展機序の解明と予防・治療に関する研究
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16591728
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
森山 寛 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (60125036)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 博己 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60234762)
田中 康広 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (40266648)
吉川 衛 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (50277092)
和田 弘太 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (20307482)
谷口 雄一郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (30307475)
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Keywords | 中耳真珠腫 / 難治性滲出性中耳炎 / 弛緩部陥凹 / immigration / サイトカインネットワーク |
Research Abstract |
真珠腫形成の第一段階は難治性滲出性中耳炎経過中で上鼓室の粘膜障害、陰圧化、液貯留などによる弛緩部陥凹であり乳突蜂巣含気化抑制に伴う上鼓室周辺の骨性形態の狭小化と粘膜襞の形成が関与する。第二段階は弛緩部陥凹上皮粘膜側の慢性炎症の持続と増悪であり上鼓室粘膜間質の不規則な拡大と腺管形成により陥凹上皮裏面は地図状の狭小腔を形成、表皮の増殖や陥凹部上皮部分断裂・崩壊のため扁平上皮が粘膜腔へ侵入immigrationし粘膜上皮を置換する。第三段階はdebris蓄積とそこへの感染の惹起であり産生されたIL-1αを主体としたサイトカインネットワークが主役をなす。真珠腫上皮では表皮細胞間に存在するタイトジャンクションは正常構造を維持しているが角質層消失など表皮のバリアー機構は一部傷害され感染の影響を受けやすく表皮下層の細胞間隙の開大と部分的な基底膜の構造変化がありパラクラインによる表皮の増殖・分化の亢進がみられる。さらに表皮、表皮下組織のオートクラインにより表皮の増殖が誘導され炎症の悪循環により進展が起る。特に真珠腫の線維芽細胞は表皮細胞の増殖や炎症の遷延化を誘導する役割を担っている可能性がある。分化・細胞死機構に破綻はない。 発症予防は幼小児期の慢性炎症性疾患の早期治療である。乳突蜂巣は炎症の遷延化により中耳粘膜変化のみでなく乳突蜂巣の発育障害や上鼓室周辺の骨性、軟性形態の構造変化を来す。進展予防はdebris除去や抗菌剤、ステロイド点耳による局所の炎症や感染制御が重要となる。ステロイドはIL-1αやIL-6など炎症性サイトカイン産生を抑制し間接的に上皮のmigration障害が是正される。 現在、三次元培養皮膚モデルによる検討、上皮下線維芽細胞の役割、Gene chipによる真珠腫上皮の遺伝子解析、並びに中耳腔粘膜の再生医療とガス換気能、遺残真珠腫上皮の生理的消滅をめざした遺伝子治療についても試行している。
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Research Products
(2 results)