Research Abstract |
セロトニン生合成の律速酵素であるトリプトファン水酸化酵素には2つのアイソフォームがある。これまで,TPH1は末梢,TPH2は中枢で,排他的に発現するとされていた。本課題では,TPH1のユビキチン化の指標となるリン酸化部位の同定をとおして,セロトニン産生の細胞レベルでの調節の機構をより鮮明にすることを目的としている。我々は,TPH1とTPH2を識別する抗TPH1,抗TPH2抗体を作成した。これによって,両分子種の分布の検証を行った結果,TPH1は脳幹でも,また,TPH2は消化管など末梢でも発現していることを明らかにした。ラット肥満細胞由来の樹立細胞株であるRBL2H3細胞ではTPH1のみが検出された。本細胞は,IgEと抗原による免疫刺激に応答してヒスタミン,ロイコトリエン,セロトニンなどを分泌するが,このセロトニン産生はTPH1によることを確認した。RBL2H3細胞における,TPH分子のユビキチン/プロテアソーム系による,きわめて速い分解は,TPH1分子のリン酸化が律速する。本研究では,ラットTPH1-cDNA上に点突然変異を導入して,リン酸化の予測される3つのセリン残基の置換を行っている。昨年度までに,S58A,S260A,S443A,二つのセリンを置換したS58/260A,S58/443A,S260/443A,三つのセリンを置換したS58/260/443Aを調整し,さらに当該年度には,さらにリン酸化の模倣を目的とし,セリンをグルタミン酸に置換したS58E,S260E,S443Eを調整した。これらの変異TPH-cDNAはいずれも,HeLa細胞に導入すると,活性なトリプトファン水酸化酵素を発現した。現在,RBL2H3細胞の破砕液をもちいたプロテアソーム反応の無細胞系をもちいて,プロテアソームによる被分解能の検証を試みている。
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