Research Abstract |
本課題では,部分床義歯やインプラント義歯など,これまで特に応力解析が困難と考えられてきた規模の大きな補綴装置を対象として,疲労による破折や変形を避けるための構造設計のシステム化の実用化を目的とした. 初年度である16年度においては,主として破損義歯の応力解析から得られた臨界応力(クリティカルストレス),および各材料の疲労強度(耐久性)データをもとに,義歯全体もしくは各構成要素の設計最適化を試みた.具体的には,部分床義歯,インプラント義歯各部の形状,大きさ,使用材料などを,耐久性が損なわれないための設計原則として提示した.これは,義歯の構成要素ごとに有限要素モデルの形状を変化させ,システマティックに行うものである.義歯やインプラント義歯の様々な構成要素について,内部の応力分布を有限要素モデルにより分析し,臨床における破折や変形と密接に関係する臨界応力の解明を試みた.その結果は,裏面に列挙した複数の論文においてすでに報告した通りである.すなわち,インプラント上部構造の設計の違いが支持歯槽骨の負担応力分布へ及ぼす影響,部分床義歯の補強設計やコネクターの設計の違いが支台歯歯周組織への圧迫の様相に及ぼす影響などを明確に提示することができた. 今後は引き続き,義歯の疲労データを蓄積,分析し,最適設計を容易に行うための包括的なシステムの構築を行う.本課題では,この疲労強度に基づいた義歯設計システムを,特に新素材・新技法の正確な評価法へと発展させることを大きな目標としている.そこで,17年度においては上記の方法論を基に,新素材評価システムへと応用するためのシステム構成を確立する.
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