Research Abstract |
タクアン,ニンジン,キュウリ,カマボコ,ソーセージ,チーズ(15mmX15mmX1mm,2mm,3mm)の被験試料を,人工歯試料1対につき各5個ずつ準備した.剪断試験では万能試験機上に,人工歯試料のプランジャーが下降してディスクの中央の穴に貫入するようにセッティングした.ディスクの穴を覆うように食品試料を置き,下降したプランジャーとディスクにより食品試料が剪断される際の最大値を剪断応力として記録した.クロスヘッドスピードは20mm/minとした. 得られた剪断応力は,タクアン,ニンジン,キュウリなどの野菜において,カマボコ,ソーセージ,チーズと比べ,明らかに大きかった.さらに,食品試料別に人工歯試料と食品試料の厚みを因子とした2元配置分散分析を行い多重比較を行った.その結果,すべての食品において,剪断応力は人工歯材料と食品の厚みにより有意に影響を受けた.剪断応力は陶歯において最も低い値を示し,さらに食品試料の厚みが3mmにおいて最も大きく,1mmにおいて最も小さかった.また,タクアンのみ人工歯材料と食品の厚みの間に相互作用もみられた。陶歯は食品の厚みに関わらず,他の人工歯材料と比較して小さな力で食品を剪断することができることが示唆されたが,特に繊維状のタクアンやニンジンでは,人工歯材料間での差が大きかった.カマボコ,チーズ,ソーセージでは,剪断に必要な力が小さく,厚みによる差もわずかであった.タクアンにおいてみられた人工歯材料と食品の厚みの間の相互作用は,陶歯以外の材料においては,食品が薄いときは比較的小さな力で勢断できるが、厚くなると剪断に必要とする力がきわめて大きくなることを示している.このことにより、咀嚼能力の低下した高齢の義歯装着者の漬け物などの食品の摂取を容易にするためには,調理加工などに工夫が必要であることが示唆された.
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