2005 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の医療機関への受診行動と選好要因に関する研究-看護サービスの質向上の要素-
Project/Area Number |
16592107
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
大津 廣子 岐阜大学, 医学部, 教授 (70269637)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大日 康史 国立感染症研究所, 感染症情報センター, 主任研究官 (60223757)
足立 みゆき 岐阜大学, 医学部, 講師 (20263494)
渡邊 亜紀子 岐阜大学, 医学部, 助手 (00362153)
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Keywords | 高齢者 / 看護サービスの価格づけ / 受診行動 / コンジョイント分析 |
Research Abstract |
1.目的:高齢者を含めた一般市民の看護職に対するニーズと看護サービスの価格づけについて分析し、医療機関の選好要因を明らかにする。 2.研究方法:(調査(1))現在そして近い将来に医療需要が高いと思われる全国の50-70歳を対象にコンジョイント分析を用いた調査を行った。仮想的質問内容は、かかりつけ医以外で看護サービスの内容が異なる二つの病院を設定し、回答者が急性的に症状を呈した場合にどちらかの好ましい病院を選択するとした。看護サービスの違いは、患者への説明、注射の手技、身だしなみ・態度、価格の4項目である。価格は仮想的に看護サービスへの支払いとして無料、50円、100円を設定した。その選択結果からどの様な看護サービスがどの程度医療機関の選択に影響しているかを、random effect Probit (REP)を用いて推定する。(調査(2))G県の65歳以上の高齢者で調査の趣旨に同意の得られた300人に対して質問紙を用いた調査を行った。有効回答数は197人である。調査内容は、年齢、性別、世帯資産、総医療費、かかりつけ医の有無、入院経験の有無、どのような看護師がよいか、全身清拭、便尿器の挿入、体位変換、血圧測定、静脈内注射に対する価格づけである。分析はProbit分析、TOBIT分析を用いた 3.結果:(調査(1)の結果)『全く説明しない』サービスと比べて、『十分説明する』サービスでは、選択確率が68%ポイント増加する。『2〜3回の針刺しで注射』サービスに比べて『1回の針刺しで注射』サービスは、選択確率が36%ポイント増加する。『態度身だしなみがきちんとしていない』サービスと比べて、『態度身だしなみがきちんとしている』サービスでは選択確率が25%ポイント増加する。他方、これらの看護サービスに対する支払い価格は有意でない。(調査(2)の結果)『どのような看護師がよいか』に対する回答の第1位で最も多い項目は、『看護師の対応が親切で丁寧である(37.4%)』第2位では、『検査や治療に対する十分な説明(30.7%)』、第3位では、『安全で確実な技術(18.2%)』である。各看護サービスの価格付けは、『便・尿器の挿入(1189円)』が最も高く、ついで『体位変換(893円)』、『全身清拭(654円)』であり、『静脈内注射(551円)』は5項目中、最も低い価格づけである。 4.考察:2つの調査の分析から、一般市民の医療機関の受診行動では、看護師の説明や技術、態度により医療機関が選択されることが示された。高齢者の場合も、対応が丁寧で親切、十分な説明ができる看護師を求めている。一方、仮にそうしたサービスへの支払いを加えた場合には、消費者はそれに反応しない。また、高齢者の看護サービスの価格づけは、注射など痛みの伴うサービスよりもプライバシーの配慮が要請される排泄サービスに高い価格づけをしている。今回の調査から、有料無料あるいはその費用の多寡にかかわらず、高齢者は看護サービスの内容を見て選択していると類推できる。
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