2005 Fiscal Year Annual Research Report
従来の数理モデルでは取り扱えない新規の感染症伝播予測システムの構築と応用
Project/Area Number |
16605001
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
中村 彰 秋田大学, 医学部, 教授 (20155815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片平 昌幸 秋田大学, 医学部, 助教授 (90250860)
中込 とよ子 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (40155693)
中込 治 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (70143047)
有澤 孝吉 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (30203384)
松岡 昌則 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (70111242)
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Keywords | 計算機シミュレーション / 新興 / 再興感染症 / 感染症伝播 / 麻疹 / SARS / Influenza |
Research Abstract |
感染症の伝播を記述する従来の方法は、数理モデル(決定論的世界観と確率論的世界観)がある。然し、これらの数理モデルは単純な伝播の記述や議論しか行えず、地域毎に異なる住民構成や複数の地域を反映した現実社会への適応には無策である。本研究は、動的で複雑な現実社会における新興/再興感染症の伝播の様相を記述/再現できる汎用計算機シミュレーション(模擬実験; Monte-Carlo手法)を構築するものであり、流行の阻止を含めた社会医学/社会科学に資することを目的としたものである。 模擬実験の対象となる感染症には、麻疹に代表される高い感染率のものと、流行性感冒やSARSに代表される複雑な社会環境が関与する比較的低い感染率のものを想定した。また、複数の区市町村などから構成される複合地域にも対応している。模擬実験は想定地域の住民の全員を考慮したものであり、模擬実験の結果は実際の感染症の疫学調査結果と統計学的に比較分析を行い、模擬実験の算法(algorithm)と纂譜(programming)および必要な初期条件の設定にも反映させた。計算機の纂譜には共同研究者の専門的知識(疫学、微生物学、社会調査)を十分に反映させたものである。然しながら、この種の模擬実験はその方法論の妥当性を科学的な見地から十分に検証することにより、「シミュレーション・ゲーム」から科学的計算機模擬実験(computer simulation)として認知されるものと考えている。本研究でもこの検証にも十分な検討を加えた。 折りしも、2002年頃から話題となるSARSや鳥インフルエンザの脅威が世界的にも認識され、我々の研究構想と目的を一にする巨大プロジェクト(総額30億円超)が米国のNIHのNIGMSにおいて立ち上がった(MIDAS)。また、同種の研究(EpiSim, TranSim等;米国Los Alamos国立研究所)が月刊誌Scientific Americanに紹介されているが、それらの詳細な方法論などの核心部分は現時点で公表されていない。 これら巨大プロジェクトとの競合/競争関係下にあることを考慮し、研究成果の発表は、我々の方法論の科学的手法とその構想の独自性を示す根拠が確定するまでは、国内学会(数理社会学会:2回)と国際学会(日米合同数理社会学会:1回)での口頭発表にとどめている。
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