2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16606004
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中尾 啓子 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70338185)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 栄之 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (60160694)
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Keywords | 神経幹細胞 / 細胞増殖 / 細胞分化 / ショウジョウバエ / 成虫型ニューロブラスト / 神経上皮 / adherence junction / エンドサイトーシス |
Research Abstract |
1)Notchシグナルは哺乳類神経幹細胞の未分化状態の維持に寄与することが示されているが、分化に際してどの様にその活性が制御されるかについての詳しいメカニズムは明らかでなかった。我々哺乳類神経幹細胞のモデルとして選んだショウジョウバエ成虫型神経幹細胞の系では、幼虫初期はNotchシグナルの活性により対称分裂による自己増殖を繰り返すが、幼虫後期になって発現が上昇してくるα-AdaptinがNumbと共役してNotchタンパク質をエンドサイトーシスにより分解し始めることによりNotchシグナルを抑制し、ニューロン・グリアへの細胞分化を促進するという時間的調節機構の存在が必須であることはすでに我々が明らかにしていたが、本年度我々はMARCOMというFLP recombinaseを用いた細胞特異的遺伝子組換を起こすことにより、組換を起こした細胞及びその娘細胞からなるクローン内で遺伝子の機能解析を行うことができNotch及びその調節遺伝子の細胞特異的な機能を明らかにすることが出来た。更にNotch及びその調節遺伝子の発現は幼虫後期に神経上皮から成虫型ニューロブラストへ転換する際にも空間的に厳密に制御されており対称分裂を繰り返す神経上皮で高く、神経上皮から転換し非対称性分裂をする成虫型ニューロブラストからは徐々に減少していくのに対して、α-Adaptinは神経上皮では発現が弱く転換した成虫型ニューロブラストで発現が強いことや、α-Adaptin、Numbの突然変異体では転換した成虫型ニューロブラストにおいてもNothの発現が減少せず高いレベルに保たれている事なども明らかにした。更に神経上皮から成虫型ニューロブラストの転換にadherence junction複合体の構成要素が関与しているという知見も得た。 2)成虫型ニューロブラストにおいて特異的にGAL4を発現させることにより、ランダムに挿入されたGal4結合配列の下流に位置する未知の遺伝子Xが成虫型ニューロブラストで過剰発現するようにした機能獲得型の突然変異体のスクリーニングを300系統行ったところ、幼虫期-蛹期致死になるもの50系統のうちの5割に成虫型ニューロブラストの異常が認められ、細胞の増殖・分化を促進するものと阻害するものの両方が得られた。過剰発現によって成虫型神経幹細胞の増殖が促進されるものの一つはRNA結合モチーフを持ちスプライシングを調節すると考えられているSRタンパク質をコードしており、その機能欠失型では逆に神経幹細胞の増殖が著しく阻害されていた事からこのSRタンパク質には神経幹細胞の増殖を促進する機能があると考えられた。SRタンパク質はhnRNP Kなどの他のRNA結合たんぱく質と共に複合体を形成することも知られており、それらと共に神経幹細胞特異的なスプライシングを統合的に調節している可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)