2006 Fiscal Year Annual Research Report
1980年代以降の東京を中心とする大都市における空間の社会的生産の研究
Project/Area Number |
16610001
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
若林 幹夫 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40230916)
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Keywords | 都市空間 / 東京 / 再開発 / 都心 / 郊外 / 都市言説 / 都市イメージ |
Research Abstract |
最終年度にあたる平成18年度には、まず4月に大韓民国ソウル市のソウル市立大学で開催された国際シンポジウム、Urban Curating : Urban Culture & Urban Marketingで、これまでの研究の中間的なまとめにあたる報告を行い、80年代以降の東京の都市開発では都市的諸施設がその内部において都市空間を模像化することで文化的・経済的な付加価値を空間に与える一方で、そうした施設の外側の街や空間が「余白」のような形で後景化する傾向にあることを、お台場、恵比寿ガーデンプレイス、六本木ヒルズなどにおける開発の論理に即して明らかにした。また、ソウル市の都市再開発のフィールドワークを実施し、韓国・中国の専門家との情報・意見交換をおこなった。さらに、そうした考察と議論を踏まえて、現代の都市空間とそれをめぐる社会的な操作の展開の中で、「景観」が社会的なイシューとして浮上してきたことに関する分析を、日本橋・新宿などの具体的な場所のあり方、都市における交通メディアや情報メディアのあり方、そして都市開発の論理との関係に即しておこなった。その結果、現代の都市空間の変容が景観の消滅を通じて景観を稀少化し、商品化すらしていることを明らかにし、その成果を論文「景観の消滅、景観の浮上」として発表した。年度後半には、都市空間の生産や開発をめぐる同様の事態が郊外においても観察できるかを、多摩地区やつくばエクスプレス沿線のフィールドワーク、ネット上の都市空間をめぐる言説の変化、文献調査等を通じて明らかにする作業を行い、戦後日本の社会史、都市史、地域史の中で、郊外の都市空間の社会的生産を支える意味論が、理想の文化生活やコミュニティから、消費社会における私生活の演出へとシフトしていったことを明らかにし、その成果を単著『郊外の社会学』として刊行した。
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Research Products
(2 results)