Research Abstract |
本研究では都市発展の視点に加え,市民生活により大きな重みを置く「持続可能な都市生活」に係わる家族意思決定メカニズムを理論的に明らかにすることにより,今後のまちづくりに関する新たな方法論を提供する.具体的には,「持続可能な都市生活」の構成要素として定住(居住),生産活動,余暇(憩い)及び環境(車の保有・利用)を取り上げ,集団意思決定理論に基づき各要素における家族意思決定メカニズムの解明を試みる.今年度では,以下のような研究成果を得た. 1)持続可能な都市生活の具体的指標化として,まず,今まで定着されてきた「都市の持続可能性」の指標化を対象に,先進国と途上国を含む世界の数十都市のパネルデータを用いて,今まで課題となった,指標間の相互作用および指標の時間的変化を取り入れた「都市の持続可能性」指標を数値化することができた.しかし,都市の持続可能性と市民のクオリティ・オブ・ライフとの関係は不明である.そこで,総務省の社会生活基本調査データを用いて,時間利用パターンに着目し,家族構成員間の相互作用を考慮したクオリティ・オブ・ライフを計測し,家族の視点からみた持続可能な都市生活の指標として適用可能であることを明らかにした. 2)持続可能な都市生活に係わる家族意思決定サブモデルとして,共分散構造分析手法の枠組みの中でギャップ(期待度と満足度とのギャップ,家族構成員間のギャップ)によって定義される都市サービスの評価モデルおよび,都市サービスが家族居住行動に与える影響の評価モデル,そして,多項線形型と等弾力性型効用関数に基づく家族生活時間配分モデル及び自動車保有及び家族内共同利用モデルをそれぞれ構築し,その適用可能性を明らかにした.また,家族の視点に立った都市政策を試験的に分析した.さらに,前述のサブモデルからなる統合モデルの基本構造について試験的に検討を加えた.
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