2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16652003
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Research Institution | Keisen University |
Principal Investigator |
鬼頭 秀一 恵泉女学園大学, 人文学部, 教授 (40169892)
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Keywords | 自然再生 / 理念 / 環境倫理 / 野生動物管理 / 獣害問題 |
Research Abstract |
自然再生の理念に関しては、7月の研究会で、保全生態学の学界の中心的な生態学者数名と、日本における代表的な環境倫理、環境思想研究者を集めて議論を重ね、近年大きく変貌を遂げた生態系概念と、生物多様性保全の理念に関して検討し、その両者の間ですり合わせをすると同時に、保全ということに関わってその両者の溝の存在に関しても明らかにしてきた。 自然再生の現場に関しては、自然再生法に基づく自然再生事業が行われている、北海道釧路湿原、茨城県霞ヶ浦、埼玉県くぬぎ山地区、さらに、それ以外の形態の自然再生事業である、佐賀県アザメの瀬、栃木県鬼怒川にて、現地の踏査と、それに関わっている保全生態学や応用生態工学の研究者やNGO関係者、現地のさまざまな人たちへの聞き取り調査により、社会的、理念的な視点からのアプローチが従来欠けていたことで、最終的な理念の構築が困難に陥り、合意形成も難しい局面にあることを明らかにしてきた。 また、ちょうど、クマの「獣害」や人との関係性の難しさが全国的に噴出してきた時期に、野生動物管理学に基づき、現場に根ざして真摯な試みをしている兵庫県の事例を、現地の研究会で、その試みを担っているキーパーソンの野生動物管理学の研究者からその試みの全貌を伺い、そこにおける、環境の理念的な問題、倫理学的な問題を明らかにして、自然再生における理念的、倫理学的な問題との共通性と課題を明らかにした。今年度は、このように、理念的な、環境倫理学的な課題を抽出することにより、今後議論して整理すべき問題を剔出すると同時に、日本生態学会が進めている自然再生の指針にも、その成果を意見表明して貢献するなどの実践的で積極的な努力もしてきた。また、このようなことを通じて、孤立化していた環境倫理学や環境思想の研究者をネットワーク化していくことにも、ある程度成功した。
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Research Products
(4 results)