2004 Fiscal Year Annual Research Report
ボンド摂動を用いたランダム磁性体の非平衡ダイナミックス研究用実験システム
Project/Area Number |
16654062
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 徹哉 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (20162448)
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Keywords | ランダム磁性体 / 非平衡ダイナミックス / 半導体スピングラス / ドロップレット理論 / キャリヤ光励起 / 磁気相互作用摂動 / カオス性 |
Research Abstract |
スピングラスの秩序状態を解明するために、転移温度以下に急冷された系が平衡状態に進む過程(エイジング過程)が注目され、特にエイジング過程に何らかの摂動(温度摂動ΔT、ボンド摂動ΔJ)が加えられた際の系の挙動が集中的に研究されている。スピングラス秩序を説明する1つの立場であるドロップレット描像では、摂動前後のスピン平衡状態間には本質的に相関は存在しないが(カオス性)、摂動の大きさに関連してスピン状態間に重なりが生じる空間スケール(オーバーラップ長)が存在すると説明されている。この特徴の実験的な検証を行うため、スピングラス半導体Cd_<0.63>Mn_<0.37>Teにレーザー光を照射することで、キャリア励起を通してボンド変化ΔJを与える実験系を構築した。一般に、光照射時にはΔJに加えて温度変化ΔTが生じるが、今回開発した装置では、周囲の温度を制御することにより試料の温度変化を相殺することが可能であり、ΔJ単独の摂動を実現することができる。具体的には2枚の偏光板を光路上に設置し、その1枚をステッピングモータで回転させることで試料に照射する光量を制御し、同時に試料周囲の温度を制御することで、試料温度の変化を格段と減少させた。 実験としては、サンプルを転移温度以上から急冷し、時間t_w待機後光を時間t_p照射し、照射を止めた後磁場を印加して磁化の時間依存性を観測し、S=(1/H)dM/dlogtを求めた。ボンド摂動ΔJ下では緩和率Sのピーク高さが無摂動のときと比較して減少したが、Sのピークはt〜t_w+t_pに出現した。これは、エイジングが加算的に進行し、カオス性は出現していないことを意味する。さらに、照射強度および照射時間を変化させてもSに有意な変化は見られなかった。これは光照射中の系は平衡状態というよりは定常状態にあるため、その間のスピン配列が一つに定まらないことに起因すると考えられる。
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Research Products
(2 results)