2004 Fiscal Year Annual Research Report
嚥下に関与する神経システムに対する視覚性入力の効果の解析
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16659569
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
小野 卓史 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 講師 (30221857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
誉田 栄一 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (30192321)
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Keywords | 嚥下 / 大脳皮質 / 視覚性入力 / 末梢性入力 / 筋電図活動 |
Research Abstract |
嚥下時には、大脳皮質からの下行性インパルスと末梢からの上行性インパルスとが脳幹に存在する嚥下のパタンジェネレータで統合され、最終出力が嚥下関連運動ニューロンへ伝達されて複雑な嚥下運動が遂行される。これまで、口腔咽頭領域すなわち末梢からの刺激の属性(嚥下する物質の種類、粘度、温度、量など)が、嚥下に有意な変調作用をもたらすことが報告されている。しかしながら、視覚性入力の影響は不明であった。そこで、「嚥下時に適切な視覚刺激を与えた場合、嚥下運動が中枢性に変調される」という作業仮説をたて、筋電図活動を指標とした電気生理学的手法を用いてこの仮説を検証した。嚥下障害を認めない成人7名を被験者とした。視覚性入力として、嚥下を想起する物と嚥下を想起しない物の2種類の写真を用いた。末梢性入力は口腔内に少量の水を注入することにより与えた。仰臥位をとらせた被験者に視覚刺激を提示した後に空嚥下を指示し、再度空嚥下または3mlの水の嚥下を指示した。嚥下指示から開始までの潜時および嚥下時の筋電図活動の持続時間、最大振幅、筋活動開始から最大振幅にいたるまでの時間を測定し、視覚刺激の有無による変化を検討した。その結果、口腔内に水が存在しない条件下では中枢性入力は嚥下運動に影響を与えなかった。一方、口腔内に水が存在する条件下では中枢性入力の種類により嚥下運動に変調が見られた。すなわち、嚥下を想起する視覚刺激を提示した場合、嚥下を想起しない視覚刺激を提示した場合と比較して嚥下の開始までの潜時は有意に短縮し、嚥下中の最大振幅が減少することが示された。筋電図活動の持続時間ならびに筋活動開始から最大振幅にいたるまでの時間には有意差は認められなかった。以上の結果から、嚥下前に与えられた刺激に対して嚥下運動パタンを調節する神経機構が存在する可能性が示唆された。
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