2004 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経系の過剰興奮による脳の機能破綻を防ぐ徐波睡眠の役割
Project/Area Number |
16700291
|
Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
崔 翼龍 関西医科大学, 医学部, 助手 (60312229)
|
Keywords | 徐波睡眠 / プロスタグランディン / 機能破綻 |
Research Abstract |
てんかんや片頭痛など中枢神経系の過剰興奮を伴う疾患で、発作後に唾眠傾向が現れるのは経験的によく見られることである。現在までに、これらの睡眠、特に徐波睡眠が脳の過剰興奮による機能破綻を防ぐ重要な生体防御システムの一端を成すという研究仮説の元で、異常な脱分極の波が大脳皮質半球全般に広がる(Spreading depression)中枢神経過剰興奮モデルを確立した。自由行動下の本モデル動物において、大脳皮質の過剰興奮後、数時間に渡って徐波睡眠量が有意に増加すること、これらの徐波睡眠は大脳皮質での神経細胞の脱分極によって誘導されたCOX2が、アラキドン酸カスケードを活性化し、睡眠物質のプロスタグランディンD2などを大量に合成することによって引き起こされることを明らかにした。そこで、今年度はCOX2の選択的抑制剤を用いて、大脳皮質の過剰興奮による徐波睡眠を完全に抑制し、脳内における細胞死・ストレス関連因子の動態を検討した。結果、大脳皮質の過剰興奮後に現れる徐波睡眠量に比例して分子シャペロンであるHSP27,Grp78,HSP90の発現量が増加すること、これらの徐波睡眠を完全に抑制するとその相関性がなくなることを見出した。これらの結果は大脳皮質での過剰興奮は、細胞内の変性タンパク質・フォールディン異常タンパク質の蓄積を引き起こし、徐波睡眠中にそれらのタンパク質の修復・分解が行われることを示唆している。しかしCaspase3、TUNELなどのアポトシス関連マーカーの陽性所見は徐波睡眠を抑制した群および対照群ともに認められなかった。また、脳内自己刺激実験系を用いた中枢神経系の長時間自己負荷実験では、実験の進行に伴って、電気刺激に対する報酬閾値が徐々に上昇し、短い間隔の徐波睡眠(マイクロスリプ)が頻繁に現れることを突き止めた。これらの結果は徐波睡眠が脳の恒常性を維持する重要なシステムであることを示唆している。
|
Research Products
(3 results)