2006 Fiscal Year Annual Research Report
農村下水道処理水導入休耕田のニゴロブナのエストロゲン作用影響からの回復過程
Project/Area Number |
16710035
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
肥田 嘉文 滋賀県立大学, 環境科学部, 助手 (30315923)
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Keywords | 内分泌攪乱物質 / エストロゲン様物質 / 下水道処理水 / 生殖腺体指数(GSI) / 休耕田 / 魚類(ニゴロブナ) |
Research Abstract |
農村下水道処理水が流入する休耕田水路において雌ニゴロブナ当歳魚(0+)のGSIが有意に高値であったのは,下水道処理水由来ではなく,高密度環境下で魚自身が排泄するエストロゲンによる暴露影響と考えられた。この暴露から解除された後の生殖腺変化を検討した。その過程で,当初ニゴロブナと考えられた魚体が雌性発生を行うギンブナであったことが確定したため,別途高密度環境下で栽培したニゴロブナ種苗(栽培魚)でGSIが高値の個体群について,生育環境移行後の経時変化を検討した。(A)琵琶湖水を流入させたFRP水槽内で市販飼料にて飼育する群,(B)琵琶湖へ放流後に追跡,採捕した群,の2群を設定した(10月下旬に移行,調査は1ヶ月に1回)。B群では耳石標識の有無による天然魚との識別,他のフナ亜種との識別,年齢査定を行った。その結果,A, B群ともに移行1〜2ヶ月後には雌個体のGSIは平均値で約4%から1%以下へ分布が減少し,天然魚の分布と同様になった。また,B群の追跡を継続したところ,産卵期前の3〜4月で雌栽培魚は天然魚より早くGSIの上昇が見られ,平均の最大値も13%と天然魚の5%より高値となり,生育初期のエストロゲン暴露の遅発影響が推察され,現在も引き続き調査を行っている。さらに,1+以上の成熟魚のGSI季節変動を調査し,雌雄ともに産卵期を過ぎる7月後半から急激に減少し,9月後半から再び上昇を始め,産卵期前の3月から年間で最大のピークを形成して雌で15%,雄で5%を越える成熟を迎えることを明らかにした。 酵母アッセイ系による琵琶湖流出水のエストロゲン活性(hERα/medERα)は,2年間(n=50)の平均値で0.2/2.6 ngE2/1であり,休耕田水路(2.5/7.3 ngE2/1)と比較して排泄物由来の寄与を反映していると考えられるhERα活性が1/10以下と特に低値であった。
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