2004 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質層構造構築過程における神経細胞移動に与える低線量電離放射線の影響
Project/Area Number |
16710041
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
武藤 哲司 独立行政法人理化学研究所, 細胞培養技術開発チーム, 研究員 (40360648)
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Keywords | 誕生日特異的ラベル / 大脳皮質層構造 / ライブイメージング |
Research Abstract |
電離放射線による脳の機能的、組織学的な障害が発生する過程における細胞分裂、細胞挙動、形態、を詳細かつ横断的に解析することを目的として以下の研究を遂行中である。子宮内マウス胎児大脳皮質にアデノウイルスベクターを感染させることで、胎生11.5-12.5日に誕生した神経細胞を、誕生日特異的に蛍光タンパク質でラベルした。直後に0-2Gまでの電離放射線を照射した後、二日後に胎児を取り出し、脳スライスを作成して蛍光顕微鏡下で経時観察を行った。その結果、電離放射線を照射されたマウス胎児大脳皮質において移動中の神経細胞の形態、移動について、まだ予備的ではあるが、いくつかの観察結果が得られた。まず、移動中の神経細胞においてintermediate zoneからcortical plateに移動する際の神経細胞のleading processは、無照射群では直線的にpial surfaceに向かって伸び、次いで細胞体がmarginal zone(MZ)に到達するのであるが、低線量放射線照射群では直線的に伸びず、また頻繁に分枝することがあげられる。またそれに続く神経細胞の放射方向への移動が障害され、MZまで到達しない細胞が散見された。これらの異常の度合いは線量に比例して増悪し、2Gを超えるところで胎児の死亡率が大幅に上昇し、観察が不可能となった。以前にXueらが低線量放射線の照射によって胎生後期のラジアルファイバーが乱れているという報告を行ったが(Xue-Zhi et al.1999)、上記の観察結果が神経細胞移動のガイド役であるとされるラジアルファイバーの乱れによる可能性があり、非常に興味深い。1.5Gy照射直後の胎児脳切片をγH2AXの抗体で染色すると脳全体でFociが観察され、DNA二重鎖切断が起こっていた。照射と同時にラベルを入れた細胞と、照射後一定期間おいてからラベルを入れた神経細胞の動態を現在調査中である。
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