2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16720007
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
橋本 崇 東海大学, 文学部, 助教授 (20287105)
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Keywords | 日本哲学 / 京都学派 / シェリング / ドイツ観念論 / ヘーゲル / 否定性 / 魂 / 個体性 |
Research Abstract |
今年度は特に、ドイツ観念論における後期シェリングのヘーゲル批判を軸に研究を遂行した。ドイツ観念論については明治以来日本でも数多くの研究が発表されてきており、戦後は特にマルクス主義との関係からヘーゲルの弁証法を解明しようとする研究や、その延長としてシェリングにもマルクス主義の端緒を見いだそうとする研究などが多く見られたが、本研究においては日本哲学との接点の解明を目指すため、従来の研究では無視されがちであった宗教の観点からの研究を重視し、宗教哲学の色彩の濃い京都学派の哲学との連関を解明するよう心がけた。 今年度発表するに至った魂の問題や、発表準備中である神話や意識の問題は、ギリシア以来西欧哲学の伝統の中で繰り返し取り上げられ、西欧哲学の二源泉であるヘレニズムとヘブライズムの根本問題であった。このようなきわめて伝統的色彩の濃い諸問題を、西欧の文化的伝統を離れた日本の哲学者達はいかに取り入れ、対決していったのか。このような視点から、魂や神話、意識といった問題をできる限りシェリングという哲学者の体験の原点に遡ってとらえ、その原点から文化や伝統にとらわれぬいわば人類の原体験として、あるいは日本人である我々にも身近で痛切な体験としてとらえ直すことが出来るようにつとめた。特に魂の問題に関しては、西田幾多郎が構築を目指した現実世界の論理構造や、田辺元が晩年到達した聖徒の交わりの思想とも密接な連関があり、西欧哲学の基本概念である質料と形相、個体性と普遍性といった二項対立にも鋭い視点を提供しており、今回特にシェリング自身の残した書簡にも着目し、シェリング自身の体験として描き出すよう試みた。 以上のような今年度の研究に立脚して、来年度からはいよいよ本題である日本の哲学に取り組むことになるが、今年度得られた基盤を見失うことなく、哲学の地盤の上にしっかりとした研究構築を目指していきたい。
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Research Products
(1 results)