2004 Fiscal Year Annual Research Report
比較・程度・限定を表す日本語助詞の其他否定用法獲得に関する研究
Project/Area Number |
16720105
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮地 朝子 名古屋大学, 文学研究科, 講師 (10335086)
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Keywords | 日本語助詞 / 限定 / ヨリ / ホド / 形式名詞 / 文法化 / とりたて / 方言 |
Research Abstract |
本研究課題は、日本語構文構造史追究の一として、形式名詞・格助詞・副助詞として言語化される意味機能(比較・程度・限定)と、係助詞として体現する意味機能(其他否定)の関わりを明らかにし、この文法化を可能にする言語内・外的条件を考察するものである。 具体的には、秋田方言のヨリと雲伯方言のホドについて、其他否定助詞成立におけるa)過程、b)構文的条件、c)意味論的条件を追究する作業によって調査・分析する。 初年度の16年度は予定通り、秋田方言ヨリおよび雲伯方言ホドに関する資料の収集と、ヨリについての分析を開始した。a)b)は近世近代の方言資料等、c)は現代の方言辞書資料を中心にデータを集め言語地理学的手法により分析作業を続行中である。 <比較>と<其他否定>の関連性については、論文「おく「より」の文法史」を著した。<其他否定>のヨリを<比較>との関係で記述した富士谷成章の学説を通じ、成章の時代の口語においては<比較><其他否定>の曖昧例が生じており、口語訳という手法を用いた成章がこの言語事実に対する観察を過剰適用して古代語に「おくより」<其他否定>を認めたと推定した。これは言語史と言語学説史の影響関係を示すと同時に<比較><其他否定>の意味・構文的近接性を示す傍証といえる。 また、格助詞・形式名詞からの限定の副助詞用法、<其他否定>係助詞用法の獲得のメカニズムを対象とする本研究課題の理論的前提を、論文「形式名詞に関わる文法史的展開」に仮設した。特に形式名詞に関係する連体構造とその史的展開から当該の変化を可能にした要因について古代語連体形の機能変化による同格準体句の消失が同格連体名詞の要請につながり、形式名詞がこれに応じることで、副助詞・係助詞のとりたて構造に参画してきたと仮説した。この仮説に基づく研究は形式名詞の関わる他の文法化(いわゆる助動詞化)にも示唆を与える独立した課題ともなりうる。
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Research Products
(2 results)