2006 Fiscal Year Annual Research Report
比較・程度・限定を表す日本語助詞の其他否定用法獲得に関する研究
Project/Area Number |
16720105
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮地 朝子 名古屋大学, 文学研究科, 講師 (10335086)
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Keywords | 日本語助詞 / 限定 / ヨリ / シカ / 文法化 / 形式名詞 / とりたて / 方言 |
Research Abstract |
本研究課題は、日本語構文構造史の一として、形式名詞・格助詞・副助詞として言語化される意味機能(比較・程度・限定)と、係助詞として体現する意味機能(其他否定)の関わり、当該の意味機能にかかる文法化を可能にする言語内・外的条件を考察するものである。最終年度は形式名詞の文法化という観点からの歴史的・理論的考察を中心に行った。 まず前年度のシンポジウムの成果を論文化し、形式名詞の比較・程度から限定のとりたて助詞へ、あるいはモダリティの助動詞へといった文法機能への用法拡大を考えるためには、名詞句としての特性からの分析が必要かつ有効であることを主張し、係助詞化には否定のスコープの再解釈が要因となるという説を支持した(青木編『日本語の構造変化と文法化』所収論文)。ここには形式名詞による範疇化という操作そのものの意味的文法的特性を追究する必要性の主張も含む。これに基づく具体的実践として、モダリティの助動詞へ対象を広げ、口頭発表「筈からハズへ、訳からワケへ-名詞が文法化するとき」(名古屋大学文学研究科シンポジウム「拡張し変容する日本語」H19.3.3)を行った。ここでは名詞述語文および日本語の名詞の指示の文脈依存性という普遍の構造的前提と、名詞ハズ・ワケの形式化、個別具体から一般抽象へという語用論的再解釈が「助動詞」的用法の獲得につながっていると主張した。 また今年度は本研究課題を含む10年来の研究成果として『日本語助詞シカの構文構造史的研究』を上梓した。ここまでに得られた成果と視点・試みの精緻化・発展を目的とし今後は「名詞の文法化」という包括的な新課題に着手する。形式名詞の文法機能への体系的な参画は、古代語と近現代語の顕著な相違である。この発展的課題への着手は、動態としての日本語構文構造の追究という根本的な問題へのアプローチとなるだろう。本研究課題から発した大きな成果と位置づける。
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