2005 Fiscal Year Annual Research Report
中国東北地方・朝鮮半島および日本列島における古墳時代馬具の比較研究
Project/Area Number |
16720191
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中條 英樹 早稲田大学, 文学学術院, 講師 (80350403)
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Keywords | 考古学 / 馬具の比較研究 / 東アジア交流史研究 |
Research Abstract |
今年度は、中国東北地方、および日本列島各地において馬具の資料調査を引き続きおこなった。特に、10数年前には日本列島で類例が15例ほどであったヒョウ轡が、近年の調査において増加してきており、本年度の調査および文献による探索、研究者からの情報を総合すると約45例にまで増加していることが確認できた。 ヒョウ轡とは、列島における馬具の中では導入の初期段階に認められる轡で、馬が咥える銜の外側の環内に鹿角あるいは木製・鉄製の棒状の銜留めを通す轡で、実用的な馬具と考えられている。 朝鮮半島・中国東北地方などでは、このヒョウ轡が多数出土し、特に朝鮮半島ではヒョウ轡の地域的差異が判明しつつあるため、中国・韓国・日本の各地で出土するヒョウ轡の比較・分析をおこなうことによって日本列島における馬具の系譜のみならず、列島と半島・大陸との地域間交流の足跡を詳細に跡付けうる可能性をもつ。 本年度は冒頭に述べた近年に新たに出土した資料や、最近新たに保存処理が行われ公開された資料を中心に調査をおこなった。観察・実測・写真撮影をおこない、轡の製作技術や技術に裏付けられた形態構造の理解など、十分な記録を得ることができた。製作技術的視点は、技術が遺物の最終的な形態・構造を決定づける側面があり、列島の馬具の系譜や列島における馬具製作開始段階の金工技術水準を考察する上で極めて重要な情報である。 調査地は、中国東北地方のほか、国内では兵庫・福岡・熊本・宮崎・長野の各県でおこなった。 特に、最近馬具研究者に注目されている熊本県西合志町八反原古墳群出土例、保存処理後に再公開された兵庫県宮山古墳例は、朝鮮半島からの馬具の系譜上、画期をなす資料となる可能性が高い。以上の資料調査の成果をまとめて論文として公開する予定である。
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