2004 Fiscal Year Annual Research Report
コモン・ローの「学問化」--イングランド・アメリカにおける契約法学の成立--
Project/Area Number |
16730006
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
姫野 学郎 国学院大学, 法学部, 助教授 (60340866)
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Keywords | Max Rheinstein / Oliver Wendell Holmes.Jr. / Ernst Rabel / Reinhard Zimmermann / 法圏論 / 契約責任 / 損害賠償請求権 / 履行請求権 |
Research Abstract |
(1)本研究の目的は、Max Rheinsteinの『英米法における契約債務の構造』のテーゼの検証である。それによれば、1830年代から1880年代までの半世紀ほど、イングランド、アメリカの法律家がヨーロッパ大陸法、ことに契約法に関する文献に親しんだ時代はほかにない。そして、コモン・ローが体系としての契約法を形成したのは、まさにこの時期であった(ニュー・ヨーク民訴法典に始まる訴訟方式の廃止、コモン・ローとエクイティの融合、各種契約法教科書の刊行、等)。John Austinにはじまる法理学のインパクトのもと、契約責任は第一次的な給付に対する権利、第二次的な損害賠償請求の権利の--パンデクテン的な--体系として整序されていく(コモン・ローの学問化)。1932年刊行の本書は、Holmesが『コモン・ロー』(1881)のなかで提示した、このような契約責任観に対するアンティ・テーゼ--危険引き受けとしての契約--、そしてこれを受け継ぐリアリズム法学の台頭への言及で、その叙述を終えている。 (2)今年度の課題は、イングランド法に関してかれのテーゼを検証すること、ヨーロッパ大陸法に対するアメリカ法のインパクトを測定すること、にあった。その当面の帰結は以下のとおりである。第一に、イングランド法のヨーロッパ大陸法に対する関係はアンビヴァレントである。ヨーロッパ大陸法の受容においてもそれに対する反発においてもアメリカほどの深刻さは見受けられない。第二に、ヨーロッパ大陸法に対するアメリカ法のインパクトもまたアンビヴァレントである。ことに「法圏論の終わり」(Hein Koetz)といわれる現象--ヨーロッパ大陸法と「コモン・ロー」の収斂ないし接近--に対して、とくにドイツ人学者はイングランド法の学識法的性格を強調する(Reinhard Zimmermann)。 (3)次年度の課題は、イングランドとは対照的な展開をたどったアメリカ法を検証する点に向けられる。その際問題は、つぎのふたつである。第一に、イングランド法との対象性、第二に、アメリカ法のヨーロッパ化、反対にヨーロッパ大陸法のアメリカ化について結論を見いだすことである。
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