2004 Fiscal Year Annual Research Report
憲法学における公私区分の再考-政治哲学・法哲学等の公私区分批判をてがかりに
Project/Area Number |
16730011
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
巻 美矢紀 千葉大学, 法経学部, 助教授 (90323386)
|
Keywords | 公私区分 / プライヴァシー / 私人間適用 |
Research Abstract |
ポスト・モダン、中でも第二波フェミニズム及びジェンダー法学による公私区分批判を通して、「公」「私」の多義性、及び両者の相互関連性について改めて確認した。他方、最終年度において、公私区分の再構成を基礎に、憲法解釈論を展開する準備作業として、プライヴァシー、そして私人間適用に関する議論について考察した。 まず、プライヴァシーについては、最近のアメリカ連邦最高裁判決、とりわけ同性愛者に関するLawrence判決の分析をてがかりとして、「親密な関係」こそが、憲法における家族論を展開し、さらに複雑な「公」「私」の問題を整合的に理解するポイントとなりうることがわかった。 次に、リベラリズムの公私区分、すなわち国家・社会二元論を直接の基礎とする私人間適用について、近年の新たな理論構成、具体的には国家の基本権保護義務論や、裁判所を介在させる三面構成などの理論構成を分析した。その結果、私人間適用は、加害者と被害者の関係だけでなく、裁判所の権力性、憲法規範の実現における立法権と司法権との権限分配、国家の保護義務のレヴェル(憲法上のものか、法律上のものか)の問題にも関わる、人権・統治を包括する問題、ひいては立憲主義の問題であることが明らかとなった。この意味で私人間適用論は、「明文なき権利」論とリンクするのであり、そこにおける裁判所論が参考になることがわかった。また、私人間適用の学説として、現在、最も注目されている新・無効力説--道徳哲学的価値に適合的な法解釈方法論を前提とした、法律による人権保障--を分析し、それが立脚するフランスの私人間適用について考察した。フランスでは、法律による人権保障という伝統的な思考と、近年の憲法院の活性化を背景とした人権の直接適用という思考の両方があることが確認された。この点については、来年度、ポスト・モダンの公私区分批判による影響との関連も検討した上で、評価するつもりである。 以上の考察は、来年度前半に研究会で報告し、来年度後半に公表する予定である。
|
Research Products
(3 results)