2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16730048
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
遠藤 歩 東京都立大学, 法学部, 助教授 (50347259)
|
Keywords | 保証人保護 / ローマ法 / 近代法 |
Research Abstract |
本年度は、保証人保護法理再構成の第一段階として、近代的保証概念の基礎を提供したところの、ローマの保証概念とそこでの保証人保護法理を検討した。そこでの成果は、以下のとおりである。 ローマ法においては、保証の機能を営む制度が、fideiussio(信命),mandatum pecuniae credendae(貸付委任),constitutum debitii alieni(他人の債務の弁済約束)と3つあり、それぞれの類型ごとに、保証人保護法理を異にしていた。 まず、fideiussioにおいては、それが主債務者と保証人との間のamicitia関係を社会的前提としていたところから、保証人の保護は、専ら、保証人の主債務者に対する訴権を通じて図られた。具体的には、解放訴権(我国の事前求償権のモデル)、および委任反対訴権ににinfamiaを付すことによる求償権の強化である。保証人の債権者に対する関係での保護は、争点決定による消耗競合効を介して達成されるにすぎないものであった。 次に、mandatum pecuniae credendaeでは、社会関係として、委任者(保証人)の受任者(債権者)への信頼(特に受任者が銀行業者・委任者が顧客である場合が多い)が前提とされていたため、保証人の保護は、債権者に対する訴権を通じて図られた。具体的には、訴権譲渡の利益および担保保存義務の存在である。他方、保証人は、受益者(債務者)との関係では、特別な内部関係が存在しない限り、保護手段を有しなかった。 最後に、constitutum debitii alieniは、保証人と債務者の間に存する権力服従関係を前提としており、なおかつ保証人は債権者との関係でも委任当事者関係にたたなかったため、この類型では、保証人の保護法理が存在しなかった。 以上の成果から、現在は、このような三つの保証類型が近代的保証概念に転化する際に、各保証類型が有していた社会的背景が捨象され、かつ、資本主義生成期に債権者保護が強調されたことを原因として、constitutum debitii alieniが近代的保証概念の実質的モデルとされた仮説をたてている。来年度は、それをフランスおよびドイツについて検証し、最後に日本法における保証人保護法理を提唱する。
|