2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16730058
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中村 康江 立命館大学, 法学部, 助教授 (60368016)
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Keywords | 会社 / 信託 / 投資信託 |
Research Abstract |
現在は、本研究のテーマである「事業組織体のガバナンス」に関連し、信託を中心とした研究をすすめている。とりわけ、商事信託のうちでも、投資信託と資産流動化信託を中心に、受益者保護のための法制度上の課題の一部として、受益者による委託者の監督機能について、委託者の責任、情報提供義務、および受益者による委託者の解任請求の可能性について検討しているところである。 信託法は、受託者に対し、信託ごとに当該信託の事務処理と計算を明らかにする義務(39条1項)を負わせる。また、受益者等の利害関係人(信託当事者のみならず、受益者・委託者の債権者、受託者と取引しようとする第三者も含む)には常時これらの書類を閲覧する権限が認められている(40条1項)うえ、さらに、委託者(その相続人を含む)および受益者等の重要な利害関係人には、信託事務の処理に関する説明を求めることも認められている(40条2項)。これらの情報開示請求権は、受託者が信託目的にしたがって信託財産を管理処分しているか否かについて受益者が監督権限を行使することを可能にする制度と位置づけられている。さらに、このような開示請求権にもかかわらず、受託者に重要な信託違反があった場合には、委託者(その相続人を含む)および受益者は、裁判所に受託者の解任を請求することができる(47条)。 これらの制度は信託法制定当時から定められているが、近年ではこれらの法規整を部分的に修正する必要が生じている。その背景には、信託当事者、とりわけ受益権者の数の増大(合同運用型投資信託を参照)と、信託財産にまつわる情報の複雑化が存在していると考えられる。その修正は、具体的には、受益権者による集会の法定(流動化法179条参照)のような、多数の受益者による意思表示のための制度設計および受益者間の利害関係の調整(信託法40条2項の解釈による説明責任の制限)によって図られている。また、信託法改正法案においては、受託者の責任を明確にすることにより(法案40条および41条)、信託をめぐる利害関係の複雑化に対応しようとしている。しかしながら、これらの制度の相互関係については、未だに明らかでない点も多い。 今後は、これらの問題について、日本法においてどのような解決を図ることができるかという点について、(1)受益者による監視義務行使のための枠組み構築(集団的意思決定のための方法論)と(2)監視義務行使によって生じうる利益相反・権利濫用への対処、の二つの点を中心に検討を進める予定である。米国に関しては、統一信託法典、信託法第二次リステイトメント、プルーデント・インベスター法、関連する裁判例等の検討を中心に検討をすすめている。
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Research Products
(1 results)