2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16730058
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中村 康江 立命館大学, 法学部, 助教授 (60368016)
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Keywords | 信託法 / 受益者 / 受託者 |
Research Abstract |
研究期間の最終年度にあたる本年度は、研究のテーマである「事業組織体のガバナンス」に関連し、信託を中心とした研究をすすめ、一定の成果を公表するに至った。今年度は改正信託法の成立もあり、信託を巡る法状況に大きな変化が生じた年といえる。そのような動向の中で、まず、信託の母国である英国の信託法制に関する研究成果を公表した。この論文は、英国における受託者の変更について、信託に関する成文法および判例を分析したものである。受託者は信託財産の管理・運用の中核となる主体であるが、何らかの事情により当初選定された受託者がその任務を継続することができなくなることもあり得る。このような場合に信託を終了させ、新たに信託を設定することもできるが、従前の信託の枠組みを維持したまま新たな受託者を選任することも可能である。英国においては、日本法のように受益者と委託者との同意や裁判所の許可を要せず、受益者の意思のみにより受託者を解任し、新受託者を選任することが認められている。このような形で受益者に強い裁量権を認めることの是非については英国でも議論されているところであるが、日本においても今後、受益者の「地位」と「監督」権限の限界を考える上で、重要なテーマのひとつとなるものと考える。また、改正信託法における受益者の権利およびその保護についても、別途検討し、論文をまとめている。これらの論文は、信託という法形態において受益者の果たす監督権限のあり方を検討したものといえる。 信託に関する研究と関連して、会社法分野においても、取締役の第三者に対する責任を巡る研究成果についての研究をすすめ、成果の公表に至った。この分野に関する先行研究は多く、議論は蓄積されているが、本論文においては、会社による知的財産権侵害を理由とした取締役の第三者に対する責任に関する判例を多く採り上げている点に意義がある。
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Research Products
(3 results)