2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16730246
|
Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
高橋 聡 西南学院大学, 商学部, 助教授 (80368969)
|
Research Abstract |
本研究は、資本市場のグローバリゼーションと情報伝達技術の進展を契機とする新たな経済環境下で、企業価値に対する主要なバリュー・ドライバーとして認識されつつある無形財の価値評価に焦点をあて、企業価値の創造が重要課題となった現在の企業環境に適した財務報告がいかにあるべきかを検討するものである。 その主要論点は、会計理論の見地から理想とされるインカム・アプローチが無形財の価値評価として適用されるとした場合、財務諸表にオンバランスされるか否かにあり、昨年度の研究目的は、初年度と同様、これを裏付ける証拠資料の収集と研究にあった。 その成果として、昨年度は、次の二点の論文、すなわち「無形財の会計的側面」と「資産の評価概念と無形財の価値評価」を大学紀要にに公表し、前者では、無形財の会計が実際の企業でどのように扱われているのかをスカンジナビア諸国の資料をもとに分析し、無形財単独のオンバランス化はなされる傾向にはないが、事業概況報告で無形財への注意を喚起し、情報開示に努めていることを明確にした。また後者では、理論として無形財の資産性を検討した場合、無形財全般が資産としての性質を有するためには経済的側面よりも法律的・契約的側面が問題となることから、たとえ資産性が認められても、オンバランスには慎重にならざるを得ない会計理論の現状を明確化した。 前者の論文は、知的資本の一般的な測定方法が、(1)無形資産の価値の付与を試みるもの、(2)簿価と時価との差異をもって知的資本を理解するもの、(3)人的資本に焦点を当てたものの3つの方法に大別されることを発見した平成16年度の成果を具体例をもとに示したものであるが、後者において、企業の財務諸表ではなく事業報告のなかでしか開示できない問題が会計の概念フレームワークに内在し、会計認識を阻害する状況にあることを示唆できたということでより一層の意義ももたすことが可能になったと考える。 以上から、昨年度は、無形財会計の現状(問題点)を理論的に研究し、問題を焦点化したという点で成果があるものと考えられ、これが本年度の最終成果につながる貴重なる方向性を得たものと確信している。
|
Research Products
(2 results)