2004 Fiscal Year Annual Research Report
青年期におけるネガティブイベントからの心理的回復メカニズムに関する実証的研究
Project/Area Number |
16730325
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
中谷 素之 三重大学, 教育学部, 助教授 (60303575)
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Keywords | 精神的回復力 / 看護実習 / 抑うつ / 愛着 |
Research Abstract |
本年度の研究では、青年期の学生を対象として,学校教育場面におけるストレスフルな出来事の経験と,個人におけるその後の心理的過程について焦点を当て、検討した。教育の場においても,レジリエンスは重要な概念であり、なかでも集中的な実習・演習の授業では学生は多大なストレスにさらされる。実習は多くの場合,学生にとって新奇で困難な状況であり,また授業自体の重要度の面からも高い心理的・身体的な負担を感じやすい。とりわけ看護教育においては,看護実習は特に重要な意義をもつものであり,実習においてどのような経験をするかにより,その後の看護の学習や職業への展望にも大きく影響することが知られている。看護実習経験において学生のもつ精神的回復力がどのような影響を及ぼしているかについて注目した例はこれまで見られないことから、本研究では,看護実習における精神的回復力の効果を検討した。 愛知県内の看護専門学校学生2年生104名を対象として、短期縦断的な調査を実施した。実習前に小塩ら(2001)の精神的回復力尺度および丹羽(2002)の愛着尺度、2週間の実習終了後には抑うつ尺度CES-D(島ら,1985)および自己成長力尺度(速水ら,1994)が実施された。 その結果、各尺度のα係数は高く、信頼性が認められた。相関分析を行い、その結果を踏まえて階層的重回帰分析を行ったところ、精神的回復力の各側面により適応に対する異なる影響がみられた。新奇性追求からは自己成長力への正の影響が、そして感情調整からは抑うつに対して正の影響が見出された。この結果から、看護実習というストレスフルな教育場面における適応には、個人のもつ精神的回復力が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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