2005 Fiscal Year Annual Research Report
走査トンネル顕微鏡を用いた単一分子の電気伝導特性の評価
Project/Area Number |
16750022
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
片野 諭 独立行政法人理化学研究所, 川合表面化学研究室, 基礎科学特別研究員 (00373291)
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Keywords | 分子エレクトロニクス / ナノエレクトロニクス / 走査トンネル顕微鏡(STM) / 走査トンネル分光法(STS) / 電気伝導度 / 単一分子化学 |
Research Abstract |
本研究課題は、単一分子の電子状態および電気伝導を走査トンネル顕微鏡(STM)をベースとした走査トンネル分光法(STS)により明らかにすること、機能性を持たせた官能基修飾に伴う分子の吸着構造および電気伝導の変化を明らかにして分子デバイスとしてコントロールできる環境を見いだすことを目標としている。平成17年度において、下記の事項を明らかにした。 1.官能基修飾にともなう吸着芳香族分子の電子状態変化 Cu(110)表面に吸着させた安息香酸(C6H5COOH)誘導体の電子状態をSTMおよびSTSを用いて単一分子レベルで検証した。フェニル基のメタ位に電子供与性のアミノ基を有するm-アミノ安息香酸は、吸着に伴い分子のLUMOがFermiエネルギー下の占有状態までシフトすることがSTSおよびSTSの2次元マッピングから明らかになった。この大きなエネルギーシフトは、分子軌道の空間分布およびメタ位からカルボキシレート位への電子移動にともなう分子-金属間の強い結合生成に起因することが示唆された。 2.剛直三脚分子の構造制御および電子状態の解明 Au(111)表面にブロモアダマンタントリチオール(BATT)の剛直三脚分子を吸着させ、その自己組織化単分子(SAM)膜の構造形成過程および単分子電子状態をSTMおよび走査トンネル分光法(STS)により明らかにした。この剛直三脚分子のSAM膜構造は、帯状の一次元成長を経て表面全体に二次元成長することが分かった。この特徴的なSAM膜形成は、隣接分子のS-S相互作用により安定化にされていると解釈された。さらに、STSにより、BATT分子は金属の電子状態をスクーリニングすることが分かった。これはアダマンタン骨格がσ軌道で構成される共有結合で形成されるため、分子骨格の電気伝導性に乏しいためであると解釈される。
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