2004 Fiscal Year Annual Research Report
分子内・分子間プロトトロピーを基盤とする新奇クロモトロピック有機結晶の構築
Project/Area Number |
16750038
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
網本 貴一 九州大学, 高等教育総合開発研究センター, 助手 (60294873)
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Keywords | プロトトロピー / プロトン移動 / フォトクロミズム / クロモトロピズム / ニトロ基 / 有機光化学 / 有機結晶 / シッフ塩基類 |
Research Abstract |
サリチリデンアニリンやニトロベンジルピリジン類に見られるように、光誘起プロトン移動を示す有機色素にはフォトクロミック化合物となるものがある。しかしながら、プロトン移動により色調が変化する有機フォトクロミック化合物は生成する光着色体が熱的に安定でなく、元の化学種への逆反応が容易に進行するのが一般的である。本研究の中で網本は、o-ニトロベンジリデン-3-アミノ-5-メチルピラゾールの結晶が太陽光のもとで著しく着色し、しかも生成した光着色体は非常に安定で退色しないことを見いだした。この光着色反応はニトロ基による光励起水素引き抜き反応により進行し、o-ニトロソベンズアミドが生成したことによるものであることが、各種の分光学的な実験結果と分子軌道計算から明らかとなった。この光反応は類似のトリアゾール・テトラゾール誘導体においても進行したが、ピラゾールに比べて反応効率や光着色性は低かった。この光反応性の違いはヘテロ環のHOMOレベルと相関していることも分子軌道計算より理解された。ニトロ基が光反応によって官能基変換を受け、分子の電子状態が大きく変化して色調や分子物性が変わることを示したこの研究成果は、今後の光機能超分子系の基本設計に貢献する知見を与えるものである。 本研究成果は平成16年度後半になって得られた最新のもので、国内学会(2004年光化学討論会)および国際学会(16th Japan-Korea Joint Seminar for Young Organic Chemists)において報告し、現在国際論文誌に公表すべく投稿準備を進めている。
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