2004 Fiscal Year Annual Research Report
可変バイトアングル型新規不斉リン二座配位子の開発と不斉合成への応用
Project/Area Number |
16750083
|
Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
伊藤 克治 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (10284449)
|
Keywords | 不斉リン二座配位子 / ビナフトール / P,O-キレート型配位子 / 銅錯体 / 不斉共役付加反応 |
Research Abstract |
平成16年度では当初計画に従い,まず2つのビナフチル骨格を持つ新規リン二座配位子の合成に着手した。市販の(S)-ビナフトールを出発原料に用いて,一方の水酸基をジアルキルホスフィノ基やジフェニルホスフィノ基へ誘導した。他方の水酸基をトリフラート化してホモカップリングを種々検討したが,反応が進行しなかった。 そこで,次にホスフィノ基の導入前にホモカップリングする方法について検討した。種々検討した結果,(S)-ビナフトールの一方の水酸基をMOM化し,他方をリン酸エステルへ誘導してリチウムナフタレニドで還元し,臭化銅(II)を用いた酸化的カップリングを行うと,目的のホモカップリング体を得ることができた。現在,フェノール性水酸基の官能基変換によるリン二座配位子への誘導について検討中である。 この研究過程で合成した2-ジアルキルホスフィノ-2'-ヒドロキシ-1,1'-ビナフチルは,P,O-キレート型の新規不斉配位子として利用できるものと考えられた。そこで,種々の不斉反応への応用について検討したところ,その銅(II)錯体がジエチル亜鉛を用いた非環状エノンの不斉共役付加反応に有効であることを見出した。リン上の置換基の種類により,反応性と選択性が大きな影響を受けるが,n-ブチル基を持つ配位子を用いると,カルコン誘導体の反応で99%ee以上の完全な選択性を達成することができた。特に,従来の触媒では高選択性を得るのが困難なアルキル置換されたエノンの反応でも,90%ee以上の高選択性を得ることができた。また,従来の不斉共役付加反応では,トルエンやジクロロメタンのような非極性溶媒が用いられているのに対して,本反応ではN,N-ジメチルホルムアミドやテトラヒドロフランのような極性溶媒が有効であるという興味ある知見も見出した。これらの成果については,現在論文投稿中である。
|