2005 Fiscal Year Annual Research Report
酸化還元活性金属錯体の薄膜構造精密制御とバイポーラトランジスタへの応用
Project/Area Number |
16750118
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
張 浩徹 京都大学, 工学研究科, 助手 (60335198)
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Keywords | 電界効果トランジスタ / 金属錯体 / 酸化還元 / レドックス / 薄膜 / p型 / バイポーラ / 蒸着膜 |
Research Abstract |
本研究では、(1)酸化及び還元に対し活性な分子性金属錯体の薄膜相における精密構造解析を行い、薄膜相における高均一性分子配列制御及びバルク結晶相とは異なる"薄膜結晶相"の探索を第一目的とした。また本研究では、(2)酸化還元活性オルトキノン金属錯体を用いて、配位子上で混合原子価状態をつくりだし、ドナー性配位子部位とアクセプター性配位子部位の直接的な分子間相互作用により、有効な重なり積分とバンドの広がりを促し、バンド伝導に基づいた高速の移動度を達成することを目的とした。最後に(3)バイポーラTFT活性能を評価することで作成した薄層相の構造均一性を評価し、「薄膜相構造-電子物性相関」を総合的に明らかにする。具体的課題としては、より均一性の高い(単結晶性の高い)薄膜相を得るために、薄膜成長条件(錯体分子構造、蒸着速度、基盤温度、蒸着速度、キャリアガス種、基盤種等)の最適化を行う。またより高い移動度を達成することを目的に、薄膜の単結晶性の向上や酸化還元電位(HOMO-LUMO準位、ギャップ)の最適化を遂行すると共に、バンド伝導に必要な錯体分子間相互作用の増強に基づくデバイス能の向上を試み、世界に先駆的に錯体分子バイポーラTFTを開発することを目的とする。昨年度は酸化及び還元活性なビスジイミノセミキノネート錯体を用いて電界効果トランジスタ能の発現に初めて成功した。分子性金属錯体のFET活性能に関する報告例は皆無に近い。得られた薄膜性錯体は理想的に駆動するp型デバイスであり、移動度は0.0138cm2/Vs(飽和領域)である。また、デバイス特性は真空中及び大気中でも変化なく、薄膜の安定性も示された。以上の知見をもとに、同様の錯体である[Pt(diiminosemiquinonate)2],[Pd(diiminosemiquinonate)2]を用いたFETを開発し、金属種依存性を明らかにした。Ni,Pt,Pdのうち、Ni錯体が最も高い移動度を示した。本年度は更に、目的であるアンバイポーラ能を発現することを目的に、Ni錯体を用い、基盤にPMMAを処理し、電極にはCaを用いることでn型FET能の発現に成功した。またアニーリングにより、n型特性が発現することも成功した。これは加熱処理による電子トラップサイトの減少が原因と考えられる。以上得られた成果により世界にさきがけて金属錯体を用いたアンバイポーラ型FETの創成に成功したと言える。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Synthesis, Structures, and Magnetic Properties of the Copper(II), Cobalt(II), and Manganese(II) Complexes with 9-Acridinecarboxylate and 4-Quinolinecarboxylate Ligands2005
Author(s)
Xian-He Bu, Ming-Liang Tong, Ya-Bo Xie, Jian-Rong Li, Ho-Chol Chang, Susumu Kitagawa, Joan Ribas
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Journal Title
Inorg.Chem. 44
Pages: 9837-9846
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[Journal Article] Metal-Organic Thin-Film Transistor (MOTFT) Based on NiII-o-diiminobenzosemiquinonate Complex2005
Author(s)
S.-i.Noro, H.-C.Chang, T.Takenobu, T.Akutagawa, D.Tanaka, T.Nakamura, S.Kitagawa, Y.Iwasa, T.Aoyama, T.Sassa, T.Wada
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Journal Title
J.Am.Chem.Soc., 127
Pages: 10012-10013