Research Abstract |
都内の下水処理場の流入下水を対象に,クリプトスポリジウムの遺伝子型の調査を行った。毎月一回合計で11回行い,それぞれ4Lの下水を調査の対象とした。 採水は毎月最終週の火曜日とし,月曜日が休日等である場合は水曜日とした。採取した下水は遠心分離して濃縮し,ショ糖浮遊法,免疫磁気ビーズ法および酢酸エチル遠心沈殿法等で精製し,蛍光抗体染色を行った。蛍光抗体染色した試料からクリプトスポリジウムオーシストを倒立型落射蛍光顕微鏡下で単離して,その個々のオーシストの遺伝子型を調査した。遺伝子型の調査は単離したオーシストのDNAをSemi-nested PCR法で増幅し,増幅産物をダイレクトシーケンスして,18S-rRNA遺伝子上の多型を解析することで判別した。 現在までに11回の調査を行い,流入下水より239個のオーシストを単離し,上述の方法で解析し,121個(51%)について種あるいは遺伝子型が判別された。遺伝子型の判別のできなかった118個(49%)はPCRでの増幅ができなかったものが91個(38%),標的部位の増幅はできたもののシークエンスの不良により判別不能となったもの27個(11%)であり,これらの判別不能のオーシストに関する情報が得られないことが本法の短所であった。 一方,種あるいは遺伝子型の判別ができた51%について,その内訳は,人を固有の宿主とするCryptosporidium parvum genotype 1が最も多く,78個(33%)であった。次いで,広く人と動物を宿主とするC.parvum genotype 2(16個,7%),同様に人と動物を宿主とするC.melearridis(13個,5%),人からの分離報告のあるC.parvum VF383(6個,3%)となった。また,人への感染は認められていない動物由来のタイプが,豚からの分離株が2種(7個,3%)およびマウスからの分離株(1個,0.4%)であった。調査対象とした下水では遺伝子型が判別できたもののほとんどが人固有あるいは人獣共通のクリプトスポリジウムであったことから,本下水の集水域ではC.parvum genotype 1を中心とする感染者が相当数存在することが推測された。
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