2004 Fiscal Year Annual Research Report
地震火災から木造文化都市を守る環境防災水利整備の事業推進施策に関する研究
Project/Area Number |
16760489
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大窪 健之 京都大学, 地球環境学堂, 助教授 (10252470)
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Keywords | 地震火災 / 防災水利 / 自然水利 / 整備事業 / 事業プロセス / 事例調査 / 住民意識 / アンケート調査 |
Research Abstract |
阪神・淡路大震災における消火活動の苦い経験から、自然水利等の活用を含めた消防水利の多元化が必要となる一方、消防車や消防隊による消火活動だけでなく、地域住民による初期消火にまで対応できるように環境整備を行うことが重要となることが明らかとなった。 しかしながら、既存の水利とその周辺環境を活用した整備事業を推進するためには、条例を含む水利権等の法制度、水面、公園、道路など多岐にわたる担当行政部局問の調整、事業資金の調達、周辺住民との協働など、そのプロセスにおいて複雑で困難な手続きを踏まえる必要があり、事業の実現は容易とはいえない。 そこで本研究は、非常時に活用できる水利のうち、上水道以外の地域の自然水利等に着目し、これらを防災に活かす目的で整備を行った各地の実績について、水利種別に代表的事例の実態調査を行い、その事業プロセスの特徴を明らかにすること、さらに市民側の視点から整備に対する評価や日常の水利活用状況、防災意識の調査を行うことで、「環境防災水利」のあるべき事業プロセスとその指針について、知見の抽出を行うことを目的とした。 平成16年度の研究実績としては、まず、整備事業プロセスに関する代表的事例の調査が挙げられる。岐阜県高山市における用水路とそれに併設の防火水槽や井戸水貯水槽整備、岐阜県郡上市八幡町における水路・ポケットパーク整備、兵庫県西宮市における河川への消防用取水施設設置整備、北海道札幌市における下水の高度処理水を活用した消火栓・せせらぎ整備、枚方市における下水の高度処理水を活用した消火栓整備、ならびに東京都板橋区における防災井戸を併設したポケットパークや雨水貯水槽の整備、兵庫県神戸市における海水を防災に活用する雨水遮集幹線整備や高度処理水の活用によるせせらぎ整備、愛媛県松山市における水路への防火堰改修整備と水路の親水整備についての事業プロセスや設計手法についてのヒアリングを行い、これまでの研究実績と合わせて水利種別ごとの事業プロセスの整理を行った。 さらに市民側の視点から整備事業を分析するために、特徴的な4事例を選定し、市民アンケート調査を実施する。対象地域は、阪神・淡路大震災を経験し、消防機関による河川水利用を容易にし、市民も水とふれあえるよう親水機能も付加する整備を実施した兵庫県神戸市都賀川流域、同じく震災後、河川底に取水ピットを整備した兵庫県西宮市、震災は経験していないものの、火災に弱い都市を抱え、取水ピットや水面へのアクセス階段を設けた石川県金沢市、特に市民も利用可能な防災機能は付加されていないものの親水整備を実施した札幌市安春川流域を選定し、市民の整備に対する評価や日常の水利利用状況、防災意識の調査を行う。今年度は、兵庫県神戸市都賀川流域におけるアンケート調査を実施した。
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