Research Abstract |
本年度は,高温高圧水に対する塩化リチウムの溶解度の測定を行った.測定に用いた流通型の溶解度測定装置は,これまでに塩化ナトリウムおよび塩化カリウムの溶解度を測定しており,測定装置および測定法の健全性が実証されている.測定条件は,温度350〜400℃,圧力9〜12MPaの範囲で行った.分析にはイオンクロマトグラフィーを用い,サンプル中のカチオン濃度を分析することにより,溶解度を決定した.高温高圧水に対する塩化ナトリウムおよび塩化カリウムの溶解度は,同一条件下でほぼ同程度であり,カチオンの違いによる溶解度差は観測されなかったが,カチオンをリチウムに変えることで,溶解度に変化が見られた.その結果,測定条件下において気液平衡となっている可能性が示唆された.これは,リチウムはナトリウムやカリウムと同様,アルカリ金属であるが,その融点はナトリウムやカリウムと比較して低く,物性としてはむしろアルカリ土類金属であるマグネシウムに似た性質を持っていることによるものと考えられる. また,測定と同時に既報の高温高圧水に対する無機化合物の溶解度データを収集し,各データの信頼性について検討を行った.さらに,これらのデータおよび本研究で得られた実測値に対して,溶液論による相関法および状態方程式を用いた水和モデルによる相関法,さらには経験的な状態方程式を用いた方法などを適用し,これらの相関法による高温高圧水中の無機化合物の溶解度の計算への適用性について検討を行い,工業的に有用な相関法の開発のための知見を得た.
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