2004 Fiscal Year Annual Research Report
クラゲの受精時の卵内Ca^<2+>濃度上昇の役割の解明
Project/Area Number |
16770055
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
出口 竜作 宮城教育大学, 教育学部, 助教授 (90302257)
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Keywords | カルシウムイオン / MAPキナーゼ / 受精 / 刺胞動物 / エダアシクラゲ / 精子誘引 / 卵表層 / 細胞周期 |
Research Abstract |
エダアシクラゲの受精卵においては、卵内のCa^<2+>濃度が上昇した後、(1)精子誘引能力の低下、(2)卵表層の粘着性の上昇(および微細構造の変化)、(3)cell cycleの進行などの現象が起こる。本年度は、生理学的、生化学的、および組織学的手法を用いて、これら三つの現象が卵内Ca^<2+>濃度上昇によっていかに制御されているのかを検証した。まず、受精後、様々なタイミングで受精卵にCa^<2+>キレーターであるBAPTAを注入する実験を行った。その結果、受精30秒後に注入した場合には効果はなかったが、受精10秒後に注入した場合にはいずれの現象も抑制されることが分かった。また、逆に、未受精卵にイノシトール3リン酸(IP_3)を注入して卵内のCa^<2+>濃度を人為的に上昇させた時には、三つの現象全てが誘起された。次に、ウニ卵において卵内Ca^<2+>濃度上昇の下流で働くことが知られているMAPキナーゼの動態について、エダアシクラゲでも調べてみた。エダアシクラゲの未受精卵では活性型のMAPキナーゼが検出されたが、受精卵およびIP_3注入卵では検出されなくなった。このようなMAPキナーゼの不活性化は、MEK(MAPキナーゼキナーゼ)の阻害剤であるU0126でも誘起されたが、U0126処理を行った未受精卵は、Ca^<2+>上昇を示すことなしに、上記の三つの現象を誘起することが分かった。逆に、恒常的活性型のMos(MAPキナーゼキナーゼキナーゼ)を予め注入しておいた卵に媒精したところ、受精時の卵内Ca^<2+>上昇は抑制されることなく、三つの現象全てが阻害されることが分かった。以上の結果は、受精後の卵内Ca^<2+>上昇がMAPキナーゼの不活性化を引き起こすこと、また、このMAPキナーゼ不活性化が精子誘引能力の低下、卵表層の変化、およびcell cycle進行という一連の現象を制御していることを強く示唆している。
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Research Products
(1 results)