2006 Fiscal Year Annual Research Report
化学反応のゆらぎと協同現象としての細胞現象の理論生物物理
Project/Area Number |
16770118
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
柴田 達夫 広島大学, 大学院理学研究科, 助教授 (10359888)
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Keywords | 反応のゆらぎ / シグナル伝達系ネットワーク / 走化性 |
Research Abstract |
これまで,シグナル伝達系における反応ゆらぎとシグナル増幅の関係に関する研究を進めてきた。その結果は,gain-fluctuation relationとしてまとめることが出来た。本年度はその結果を,細胞性粘菌の走化性シグナル伝達系に適用した。細胞性粘菌は,cAMPの濃度勾配を感じて,濃度の高い方へ向かって運動をする(走化性)。細胞の走化性の正確さを調べた実験によると,それは濃度勾配の大きさや,濃度の絶対値に依存していた。走化性の正確さはcAMPの濃度とともに上昇し,ある濃度で最大値を示し,さらにcAMPの濃度が上昇すると,正確さは逆に減少する。その結果を定量的に説明するために,走化性シグナル伝達系のシグナルとノイズの比,SN比を数理的求めた。実際のパラメータを代入すると,それは実験結果と見事に一致した。このことから,細胞の振る舞いには確かにシグナル伝達系における反応のノイズとその伝搬を考慮に入れる必要があることを示している。この理論を用いると,レセプターの数などのさまざまな生化学パラメータが変化したときに走化性の正確さがどのように変化するかを予言することが出来る。従って,ある変異株で走化性の効率が野生株に比較して変化したときに,どの生化学パラメータに変化があったのかを予測することが出来る。
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