2004 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の健康増進のための園芸療法の効果の検証と園芸療法プログラムの開発
Project/Area Number |
16780014
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
杉本 光公 信州大学, 農学部, 助教授 (20303480)
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Keywords | 園芸作業 / Ig A / 高齢者 / ストレス軽減効果 / 健康増進 |
Research Abstract |
【目的】植物を育てるという園芸作業が心身に多くの良い効果をもたらすことは広く知られている.しかし,園芸作業による効果を生理学的に検証した例はほとんどない.本研究では,花壇での作業が高齢者の心身にどのような影響を与えているかを,ストレスレベルの指標である唾液中の免疫グロブリンA(IgA)の増減を測定して明らかにしようとした. 【方法】長野県南箕輪村にある「南箕輪老人ホーム」で園芸作業および測定を行った.対象者は60代から90代の高齢者12名(男性7名,女性5名)で,2004年5月11日から10月14日まで週1回花壇での花づくり作業を行った.作業による身体的効果を調べるため,活動期間の前後または各作業の前後に身長,体重,体脂肪率,血圧,心拍数,および気温を測定した.また,ストレスへの影響を調べるため,作業の感想をアンケートで調査するとともに,各作業の前後に唾液を採取しELISA法で唾液中のIgAを定量した. 【結果及び考察】各作業の前後では,収縮期血圧,拡張期血圧および心拍数に関しては特に大きな変化はみられなかった.また,作業中の心拍数をもとに各作業および姿勢の違いによる運動強度を算出したところ,立位での作業は座位での作業と比べて明らかに運動強度が強いものの,それ程大きな運動量にはなっていなかった.作業の前後での唾液IgA量を比較した結果,座位作業で増加し,立位作業で減少していた.一方,アンケートで人気の高かった播種・挿し芽作業においてはIgA量が作業後に大きく増加しており,このような作業では,ストレス状態が軽減されていることが示された. 以上のことから,花壇での花づくり作業は高齢者にとって身体的な負担が比較的少ない作業であり,唾液中のIgA量の増減で見た場合,園芸作業によって心身的なストレスを減少させる効果が得られることが示唆された.
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