2006 Fiscal Year Annual Research Report
深海魚のタンパク質構造解析による高水圧適応の分子機構解明
Project/Area Number |
16780149
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
森田 貴己 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所海洋生産部, 主任研究員 (10371840)
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Keywords | 深海魚 / 高水圧適応 / 環境適応 / 乳酸脱水素酵素 / 部位特異的置換 / ソコダラ / 適応放散 / 分子進化 |
Research Abstract |
昨年度までの研究により、深海性ソコダラ乳酸脱水素酵素(dLDH)と浅海性ソコダラ乳酸脱水素酵素(sLDH)のアミノ酸配列は、18残基(LDHは332個のアミノ酸より構成されている)異なっていることが判明している。今年度は、部位特異的置換法を用いてdLDHに特異的なアミノ酸をsLDHへ導入した組換えLDHタンパク質(rLDH)を作成した。これまでに解析したrLDHの中で、高水圧適応に重要と考えられるアミノ酸置換は、Thr220Ala(浅海性ソコダラ→深海性ソコダラの順に表記)とHis172Glnである。 LDHにおいて220番目のアミノ酸は酵素と基質の結合に関与するループ構造の中に位置する。このアミノ酸の置換がどのように高水圧適応に貢献しているかは現在検討中である。一方、LDHの低温適応においてはAla2207hr(高温適応→低温適応の順に表記)の置換が生じている(PAFields and GN Somero,1998)。このように高水圧適応と低温適応め間でアミノ酸置換の傾向が逆になる現象は、筋肉タンパク質の一種であるミオシン重鎖においても発見されている(森田、未発表)。 LDHは4量体を形成して機能する酵素である。LDHにおいて172番目のアミノ酸は4量体を形成する際、他のLDH分子と接触するアミノ酸の一つである。LDHの4量体形成には総体積の増加が伴い、その形成は高水圧に阻害されると考えられる。His172Glnのように電荷を持たないアミノ酸残基への置換は、4量体形成時の総体積増加を抑制していると考えられ、現在解析を行っている。
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