2004 Fiscal Year Annual Research Report
脂質特異的毒素を利用した細胞膜脂質の非対称性の制御と生理機能に関する研究
Project/Area Number |
16790073
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
牧野 麻美 独立行政法人理化学研究所, スフィンゴ脂質機能研究チーム, リサーチアソシエイト (20373368)
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Keywords | ホスファチジルエタノールアミン / PIP2 / フリップフロップ / P-糖蛋白質 / 糖脂質合成阻害剤 / 多剤耐性 / がん / コレステロール |
Research Abstract |
シンナマイシンはホスファチジルエタノールアミンに特異的に結合するペプチド性の毒素であり、脂質のフリップフロップを誘起する。従って細胞をシンナマイシンで処理すると、ホスファチジルエタノールアミンが多い、あるいはシンナマイシンによるフリップフロップの活発な膜ドメインが選択的に標識される。移動している細胞をシンナマイシンで処理するとラフリングを起こしている膜ドメインだけが選択的に標識された。膜のラフリングにはアクチン骨格、ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸が関与していることは良く知られている。シンナマイシンによるホスファチジルエタノールアミンのフリップフロップに対するこれらの因子の影響を見るため、ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸に選択的に結合するPHドメインを細胞内に強発現させたところ、シンナマイシンによるフリップフロップは完全に阻害された。一方、アクチン骨格に影響を与えるサイトカラシン、ラトランキュリン、ジャスプラキノライドはフリップフロップに影響を与えず、ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸が直接フリップフロップを制御している可能性が示唆された。 細胞膜脂質のフリップフロップを制御しているタンパク質としてはP-糖蛋白質が良く知られている。P-糖蛋白質はがん細胞の多剤耐性において中心的な役割を果たしている。糖脂質合成阻害剤であるPDMPはin vitroで多剤耐性株の制がん剤に対する感受性を上げる効果があることが知られているが、最近になってこの効果は糖脂質合成阻害とは無関係であることが示唆された。われわれはPDMPが糖脂質合成とは無関係にリソソームの酸性リパーゼを阻害し、その結果細胞内のコレステロールのホメオスタシスを乱すことによりP-糖蛋白質の活性を低下させていることを示唆する結果を得た。
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Research Products
(4 results)