2004 Fiscal Year Annual Research Report
記憶および慢性疼痛制御における神経ペプチドPACAPの神経可塑性調節機構
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16790154
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
新谷 紀人 大阪大学, 薬学研究科, 助手 (10335367)
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Keywords | PACAP / ノックアウトマウス / 神経可塑性 / LTP / 記憶・学習 / 神経因性疼痛 / NMDA / NO |
Research Abstract |
本研究では、中枢・末梢神経系の可塑性制御における神経ペプチドPACAPの役割を明らかにすることを目的として、PACAP遺伝子欠損マウス(PACAP-KO)が示す表現型異常(記憶異常および慢性疼痛異常)を指標とした研究を行い、本年度は以下の知見を得た。 1.恐怖条件付け試験および新奇物体探索試験などの行動薬理学的解析から、PACAP-KOの記憶異常の大部分は、主に記憶の長期的維持が障害されることに起因することを明らかとした。また、本マウスのin vivo LTPでは、in vitro LTPと同様にその維持相に特異的障害があることを見出した。 2.PACAP-KOへのPACAPの急性脳室内投与により、野生型マウスと同様の体温上昇が起こることを示し、本マウスでもPACAP受容体が同等の機能を発現しうることを確認した。また、本処置によってPACAP-KOの記憶障害は改善されるのに対し、ジャンプなどの精神行動異常はほとんど影響を受けないことを見出した。本成績はPACAPの高次脳機能への関与が、前者ではリアルタイムで、後者では発達過程で及ぼされることを示唆するものである。 3.PACAP-KOにおいて、AMPAによるアロディニア(異疼痛)の発現は正常だが、NMDAによるアロディニア発現がほぼ完全に消失することを見出した。また本マウスでは神経結紮後、脊髄におけるNO産生の増加について.もほぼ完全に消失することを見出し、内因性のPACAPがNMDA-NOカップリングを増強することで慢性疼痛の発現に関与する可能性を示した。 4.マイクロアレイ解析により、PACAP-KOの海馬で発現変化している遺伝子群を同定した。 以上の成績により、内因性のPACAPは神経系における中・長期的な可塑的現象にリアルタイムで関与しており、特にNMDAシグナルと協調してこれらの可塑性制御を行うことが示唆された。
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