2004 Fiscal Year Annual Research Report
フルオロピリミジン系癌化学療法剤によるテーラーメイド治療実現のための基礎研究
Project/Area Number |
16790311
|
Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
岡本 能弘 名城大学, 薬学部, 講師 (40261036)
|
Keywords | 5-フルオロウラシル / ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ |
Research Abstract |
5-フルオロウラシル(5-FU)系癌化学療法剤は国内で最も使用頻度の高い抗癌剤である.体内に投与された5-FUは,速やかにその分解酵素Dihydropyrimidine dehydrogenese(DPD,EC 1.3.1.2)により分解され,体外に排泄される.一方,先天的にDPD活性が欠損・低下しているポピュレーションの存在が報告されている(表1).これらDPDを欠損した癌患者では極めて重篤な5-FUの副作用が発症する.しかもDPD欠損患者は5-FUによる化学療法を開始し,重篤な副作用が発現して初めて,その酵素欠損が判明するものであり,癌化学療法剤使用に際して大きな問題となっている.また,このような酵素欠損はDPDをコードする遺伝子(DPYD)の多型(異常)が原因であることが明らかにされている.本研究の周的は,(1)高価で特殊な機器・装置を用いることなく,簡便にDPD欠損の原因となるDPYD遺伝子の多型検出方法を開発すること,(2)日本人のDPD遺伝子多型の全貌(頻度,多型の種類)を明らかにすること,(3)DPD活性(Phenotype)と遺伝子型(Genotype)の関係を明確にし,臨床に役立てることである.特に今回は(1)に重点をおき,GenePhor DNA Separation System (Amersham Bioscience Co.)を用いた半自動SSCP(Semi automated Single Strand Conformation Polymorphisms)法によるDPYD遺伝子多型検出法の確立することを目的に本研究を行った. 本研究により,高価な装置を使わず,簡便に,精度良くDPYD遺伝子多型が検出可能なsemi automated SSCPスクリーニング法を確立することができた.本方法は5-FU系化学療法剤に関するファーマコゲノミクス研究の進展に有用なツールである.現在,著者らは,本法を用い,日本人対象のポピュレーションスタディーを進行している.そして,これまでの予備的な試験で,予想されている以上に高頻度に多型が存在することをうかがわせる結果を得ている(未公表データ).この調査結果がまとまれば,これまで不明であったDPYD遺伝子の多型の全貌が明らかとなり,その成果は将来のテーラーメイドがん化学療法の実現に極めて有益な情報となるであろう.
|