Research Abstract |
昨年度(平成16年度)は,腫瘍を合併した潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis : UC)の非腫瘍性粘膜と腫瘍非合併UCにおけるestrogen receptor(ER)のメチル化の有無をmethylation specific PCRにて解析し,腫瘍合併UCの非腫瘍性粘膜は,広範囲にメチル化を受けていることを明らかにした. 平成17年度は,前年度の結果をもとにERのメチル化の定量性解析を行った.大腸全摘術を施行された腫瘍合併UC8症例の大腸各部位(直腸,S状結腸,下行結腸,横行結腸,上行結腸,盲腸)の非腫瘍性上皮とサーベイランスにて腫瘍非合併が確認された10症例の大腸各部位からの生検材料を用いた.OCT包埋した新鮮凍結材料からlaser capture microdissectionにて粘膜上皮のDNAを抽出し,combined bisulfite restriction analysis(COBRA)法にてERのメチル化の程度を%methylationとして算出した. 計18症例の大腸各部位の非腫瘍性上皮のうち105検体が解析可能であった.腫瘍合併UCの非腫瘍性上皮における%methylationは25.4%であり,腫瘍非合併UCの4%に比較し有意に高値であった(p<0.001).また,大腸各部位における比較では,直腸から上行結腸までの広い範囲で,腫瘍合併UCの非腫瘍性上皮は腫瘍非合併UCより有意に%methylationが高かった(直腸,42.2% vs.6.9%,p<0.001;S状結腸,33.2%vs.3.8%,p<0.001;下行結腸,32.4% vs.5.4%,p<0.001;横行結腸,15.0% vs.3.6%,p<0.05;上行結腸,15.2% vs.1.7%,p<0.05;盲腸,13.6% vs.2.3%,NS).炎症の程度と%methylationには有意な相関を示さなかった. 今年度の検討から,UCの非腫瘍性粘膜におけるERのmethylationの定量解析は,腫瘍発生のhigh risk群の拾い上げに有効なマーカーとなり得ると考えられ,更に腫瘍合併UCの非腫瘍性粘膜では広範囲にERのmethylationをみとめることから,例えば直腸生検材料の解析で,high risk群の拾い上げが行える可能性が示唆された.
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