2006 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン分泌におけるcAMP,Ca2+反応性分子の網羅的解析
Project/Area Number |
16790509
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
須永 泰弘 神戸大学, 医学系研究科, 学術推進研究員 (90372664)
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Keywords | 糖尿病 / インスリン / ゲノム / トランスクリプトーム |
Research Abstract |
マウスインスリン分泌細胞株であるMIN6細胞をForskolinやIBMXで細胞内cAMPを増加させたときに発現が変化する遺伝子をGeneChipアレイを用いて網羅的に検討した。10μMのForskolinおよび100μMのIBMXを含む培地でMIN6細胞を1時間培養させた後、RNAを抽出しGeneChipを用いて発現変化した遺伝子を網羅的に解析した。2回のGeneChipによる解析から、2回とも2倍以上発現が増減していた遺伝子数はForskolin刺激では64個(増加41個、減少23個)、IBMX刺激では871個(増加457個、減少414個)であった。この中から発現量の変化の大きいものを選択しRealTime RT-PCRを行ったところ、選択したほぼすべての遺伝子の発現がGeneChipの結果と一致していた。 消化管ホルモンであるGLP-1やGIPはインクレチンと呼ばれ、いずれも膵β細胞の受容体に作用し細胞内のcAMP濃度を上昇させることにより様々な作用を有することが示されている。特にGLP-1はMIN6細胞においてH_2O_2によって誘導されるアポトーシスを抑制することが報告されている。しかしインクレチンによるアポトーシス抑制作用機構は未だ不明である。そこで、インクレチン前処置によるアポトーシス抑制効果を担う遺伝子を明らかにする目的で、2GeneChipを用いてインクレチンにより発現変化する遺伝子を網羅的に検討した。その結果、GLP-1処置で発現量が2倍以上増減した遺伝子は12801個存在した。一方、GIP処置によって2倍以上増減した遺伝子は14125個存在した。 発現が変化した遺伝子で、アポトーシス調節に関与する既知遺伝子数はGLP-1で123個、GIPで144個だった。このことから、膵β細胞において、インクレチンが単にグルコースによるインスリン分泌増強作用だけでなく、cAMPを介して種々の遺伝子の発現を変化させることにより、アポトーシス抑制作用を発揮すると考えられた。さらにGLP-1とGIPは同様にcAMP濃度を上昇させるが、影響される遺伝子は全く同一ではなかった。
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