2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16790554
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
齋藤 光正 九州大学, 大学院・医学研究院, 助手 (00315087)
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Keywords | 劇症型A群レンサ球菌感染症 / マウスモデル / 組織挫滅 / hasA / 莢膜 |
Research Abstract |
我々は、A群レンサ球菌をマウスに筋注すると急性期から回復した後に約3週間経過してそれ以降に敗血症を起こして突然死するマウスが存在することを見出し「遅延死」と名付けた。この病態は劇症型A群レンサ球菌感染症(STSS)に酷似しており、動物モデルになると考えている。 本研究の目的は、この「遅延死」の機序を解明することである。STSSは、打撲や外傷が発症の契機となったという報告がある。今回、A群レンサ球菌感染後のマウスに筋肉挫滅をくわえ、遅延死の影響について検討した。さらに、遅延死を起こしたマウスより回収した菌は莢膜を強く発現しており、病原性も強くなっていることより、多数の病原遺伝子の中でも莢膜成分であるヒアルロン酸を合成するhasA遺伝子に注目し、hasA変異株を作成し、遅延死への影響について検討した。 1.A群レンサ球菌SP2株(STSS由来株)をマウスの上肢に筋注した。筋注後10日後と20日後にマウスの下肢に挫滅を加え、その後の生存を観察した。その結果、感染後20日目に筋組織を挫滅すると遅延死が有意に早まることがわかった。しかし、10日後に筋組織を挫滅した場合では、ほとんど差は認めなかった。一方、マウスが菌血症をおこし始める時期を調べると多くのマウスが感染20日以降であった。以上より、菌血症を起こす時期に、筋組織が挫滅されると、その部位に血中のGASが定着・増殖し遅延死が促進されると考えられた。感染後、急性期の回復後に、菌接種部位を切除すると、生存率が高まった。遅延死マウスにおいては、感染局所に生存する菌が敗血症を起こして全身臓器に播種され増殖したものと考えられた。 2.ddYマウスに、SP2野生株とhasA変異株を10^7CFU筋注した場合、hasA変異株では、死亡したマウスは認めなかった。遅延死の発症には、莢膜の発現が必要条件であることが示唆された。
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